空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
「やっと、会えた……!」
腕の中の体は驚くほど軽く、少しでも力を込めれば壊れてしまいそうだった。そのあまりの脆さが、守らなければという意志をいっそう強くさせる。
「ちょっと!離れなさいよ!」
「恥を知りなさい!」
背後で里穂と母親が金切り声を上げて喚き散らす。気分の悪くなるようなノイズを聞き、拓翔はこれまで貼りつけていた愛想のいい微笑みを躊躇なく捨て去った。
震える仄香を庇うように前へ出ると、彼女の視界から二人を遮り、容赦のない言葉を叩きつける。
「最初から、お前に特別な感情なんてこれっぽちもなかった。俺がここに来たのは、仄香に会うためだ」
取り乱した怒声がぶつけられても、心は少しも揺るがない。
さきほどまで仄香の姿にかき乱されていた感情は、里穂たちの前では嘘のように凪いでいた。もはやそこにいる二人は、拓翔にとって何の価値もない、ただそこにあるだけの目障りな障害物でしかなかった。
拓翔は腕の中で小さくなる彼女を抱きしめ直し、はっきりと続ける。
「仄香は、俺にとって何にも代えがたい――世界で一番大切な人だ」
なおも響く金切り声を意に介さず、そのまま仄香の手を引いて家の外へと向かう。背後で聞こえる怒りの叫びを、玄関の扉で断ち切るようにに閉めた。
外へ出ると、冷たい夜風が頬を撫でる。その感覚にようやく、仄香との再会を喜ぶ感覚がわいてくる。
まだ無力だったあの日。シロツメクサの指輪で約束を交わしたあと、必死で努力を重ねて夢を叶え、空を飛び続けながらただ一つの願いのために生きてきた。
――やっと、本当の願いが叶う。
隣にいる仄香の手を強く握るなおす。もう二度とこの手を離すことはないと心に決め、夜の街へと足を踏み出した。