空に預けた恋を誓う〜エリートパイロットは約束の幼馴染を一途に愛しぬく〜
そして約束の日。拓翔は里穂とマンションの前で落ち合うなり、逸る心を抑えきれず、招き入れられるよりも早くその部屋へと踏み込んだ。
すっきりと整えられたリビング。見せつけるように整えられた家具が並ぶその空間の隅、華やかな装いの女の傍らに、彼女はいた。
古びたエプロンを身に纏い、気配を消し、まるでそこに置かれた家具の一部のように立ち尽くす、華奢な人影。
「仄香……?」
震える声でその名を呼ぶ。
あの頃の面影を残した小さな体は、二十五歳を過ぎているはずなのに、少女と見紛うほどに細く頼りない。けれどその優しい眼差しだけは、記憶の中と何一つ変わっていなかった。
――ようやく会えた。
その実感に突き動かされるように、拓翔はまた一歩、仄香へ歩み寄る。
「仄香、だよな……?俺のこと、覚えてるか?」
問いかけると、仄香の大きな瞳に、溢れんばかりの涙が溜まっていく。
「拓、ちゃん……」
幼いその呼び名が、すべてだった。自分をそう呼ぶのは、世界でたった一人、仄香だけだ。
仄香は戸惑いながらも、真っ直ぐに自分を見つめている。だが、かつて自分をあたたかく照らしてくれた太陽のような笑顔は消え失せ、その瞳は深い絶望に淀んでいた。
それを見た瞬間、胸が鋭く軋む。いったいどれほどの孤独と苦しみを重ねれば、ここまで変わってしまうのか。
(それでも――やっと)
こみ上げる感情に抗えず、拓翔はなりふり構わずにその細い体を強く抱きしめた。