10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない



「今回の案件は新規の業務改善プロジェクトで、契約スキームもこれから詰める段階だから、経理としても早めに入ってもらうことになる」


部長の言葉に、私は小さく頷くしかなかった。


「……分かりました」


声は落ち着いていた。少なくとも表面上は。けれど内側では、さっきからずっと“まさか”という言葉が消えない。

どうして今、この案件で。どうしてよりによって、この会社なのか。


自分のデスクに戻って共有フォルダに上がった契約資料を開くと、そこには正式に「セントリック・グローバルコンサルティング」と記載され、その下にプロジェクト責任者として「佐藤翔(さとうしょう)」の名前があった。

その文字を見た瞬間、私はしばらく画面から目を離せなかった。

仕事だ。ただの新規契約案件。何度そう言い聞かせても、胸の奥が落ち着かない。

経理として関わる以上、私は契約条件の調整や支払サイトの確認で、必ず先方とやり取りをすることになる。


私は静かにパソコンの画面を閉じて、深く息を吐いた。


これはただの業務。過去とは関係ない。


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