10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない



テーブルに置いていたおかゆに手を伸ばしながら様子を見ていると、不意に小さな笑い声が聞こえた。


「……社長?」


振り向くと、社長は口元に手を当てながら、クスクスと笑っていた。


「昔から変わらないな、お前は」

「…え?」


昔から?

そう言って、目を細めるその表情は、熱で弱っているはずなのに、どこか柔らかくて、まるで大切なものを見るみたいで、胸の奥がざわりと揺れる。

なんですか、その顔。というか、“昔”って何の話ですか。
私たち、つい最近出会ったばかりですよね?どういうこと?


疑問が一気に膨らむのに、言葉にできないまま視線だけが揺れる。

そのとき、「腹減った」と社長がぽつりと呟いて、熱を思い出したように小さく息をついた。

その一言に、さっきまでの空気が一瞬で引き戻されてしまい、私は聞きたいことを飲み込むしかなかった。


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