10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「今これ、何件?」
自分でも少し強くなってしまった声で聞きながら、画面をスクロールする手は止まらない。
「えっと……同じ取引が三件くらい……」
「三件……」
修正すれば終わる話、でもそのあとに再集計が待っている。
「すみません、本当に……」
背後で重ねられる謝罪の声、その言葉を最後まで聞いていたら、きっと余計な感情が混ざる。
「ちょっと待って」
思わず出た自分の声が、想像よりも少し強く響いてしまって、言った直後にしまったと思う。ハッとして顔を上げると、美織ちゃんは俯いたまま、手にしている資料をぎゅっと握りしめていた。
…やってしまった。いくら自分も焦っているからって、今の言い方はよくなかった。余裕がないのを、そのままぶつけるなんて、一番やっちゃいけないのに。
小さく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。それからもう一度画面に視線を落とす。数字の並び、仕訳、連動データ……一つ一つを追いながら、さっき見落としたかもしれないポイントを探していく。
……止められた可能性、ある。レビューの時。自分のチェックリスト。部門コードの更新通知。そこに確かにあったはずの確認項目が、頭の中でぼんやりと浮かんでは消える。目は通した、つもりだった。でも、つもりで終わっていたのかもしれない。
「……こっちも確認不足だった」