10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「どうしても、俺が——梨沙に会いたかった」
その言葉に、胸の奥が強く揺れた。ぎゅっと抱きしめられる力が少しだけ強くなる。
「そ、んなの…買収までしてすることじゃ…」
そう思う気持ちがないわけじゃない。でも、それ以上に、その言葉に込められた想いの大きさに、苦しくなるくらい胸がいっぱいになる。
「自分でもバカみてーだなって思うよ」
少し上から、「実際、秘書にも言われたしな」とくぐもった笑い声が落ちてくる。
そのまま少しだけ体を離されて、視線が重なる。
「でも、ライバル会社のままだったら、梨沙は俺のこと好きにならなかっただろ」
ニッと笑うその顔に、思わず息が止まりそうになる。
——それは、どうかな。
確かに、あの頃の私だったら、きっと違ったかもしれない。でも今なら、ちゃんと分かる。
「社長、あのね」
「ん?」
ゆっくりと手を伸ばして、その頬に触れる。少しだけ驚いたように目を見開くその表情が、なんだか愛しくて。
「どんな出会い方でも、私は社長のことを好きになったと思うよ」
そっと、触れるだけのキスを落とす。
一瞬、言葉を失ったみたいに固まったあと、社長はふっと笑った。そして、優しく額にキスを返してくる。
「社長じゃなくて、蒼だろ?」
「…うぅ…」
からかうようなその言い方に、思わず顔が熱くなる。
ハハッと楽しそうに笑うその顔を見た瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
この人の隣にいられることが、どうしようもなく嬉しくて。
どうしようもなく、幸せだと思った。