10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
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「それにしても、ほんとに奇跡ですよね…」
並んで寝転がるベッドの上で、ふとこぼれた言葉に、社長は少しだけ首を傾けた。
「なにが?」
「私たちがこうして一緒にいられるの。社長がうちを買収しなかったら、こうして出会えなかったわけですし」
あの日のことを思い出す。星川商事が買収されると聞いたとき、どうして、なんでって、戸惑いと不信感がぐるぐるしていた。社長のことも、少しだけ疑ってしまった瞬間もあった。それなのに今は、その出来事のおかげで、こうして隣にいられる。ほんとに、奇跡みたいだと思う。
自然と頬が緩んでしまう私を見て、社長は「あー…」と小さく声を漏らした。片手で額を押さえながら、どこか気まずそうな顔をしている。
「社長?」
「そのことなんだけど…」
手の隙間から、ちらっとこちらを見る視線。いつもなら余裕そうに見えるのに、どこかぎこちない。
「実は、最初から決めてたんだ」
「え?」
「前社長が不祥事を起こす前から、買収することは決めていた」
一瞬、言葉の意味が理解できなくて固まる。
「そ、それってどういう…!?」
思わず勢いよく体を起こして、前のめりになる。
「不祥事が出てからは、もちろん会社としての利益もあったし、社員を守りたいっていうのも本当だ。でもな…」
少しだけ間を置いて、視線を落とす。
「正直、それは二の次だった」
次の瞬間、ぐっと腕を引かれて、そのまま胸の中に引き寄せられる。驚く間もなく、耳元で重なる鼓動がやけに速くて、思わず息を呑む。