10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
手の重みと声の振動、そして目の前の数字の緊張感が、混ざり合って胸がぎゅっとなる。
冷静にならなきゃ、と思いながらも、社長の手が触れているだけで、息が少し乱れるのを止められない。
「じゃあ、一旦止めといていいんですね?」
さっきも思ったけれど、やっぱりこの人には簡単に包み込まれてしまうんじゃないか、と思うほどの社長の大きな体と、感じたくはないのに感じてしまう大人の色気、そして重ねられた右手に、私の心は爆発しそうになる。
それに、なんだかいい匂いがして、息を吸い込むたびに引き寄せられてしまう感覚に陥る。
「白石」
「…っ、は、い」
返事をするのもやっとで、頭の中は真っ白に近い。
「この請求書、まだ出さないで」
社長は私の返事を聞く前に、電話をしながらオフィスを出ていってしまう。
その背中を見送りながら、ドキ、ドキ、と心臓がうるさく鳴るのを感じる。
頬に熱が集まっているのを、自分でも自覚せずにはいられなかった。