10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
ふう、と小さく息を吐き、椅子に沈み込む。
社長は私の後ろで電話をしているが、気にしない、気にしない。さっさと終わらせて帰ろう。
コーヒーを一口飲んで、今日美織ちゃんに作ってもらった請求書を確認する。
漏れがないか細かくチェックしていると、ふと影が落ちた。
「ああ、はい。それなら、今確認できますよ」
社長の声が耳元で聞こえたと同時に、マウスに置かれた私の右手に、重なるように社長の右手が触れる。
思わず息が止まり、耳元に低く落ちる声が鼓膜を震わせる。
「はい、はい。大丈夫です」
「……っ、」
その近さに、心臓がますます早く打つのを感じながらも、画面の請求書を必死で見ようとする。
ちょうど今、私がチェックしているのは、美織ちゃんが作った請求書の取引先の会社のもので、電話の声と重なって内容が頭に入りにくい。