気がついたら天才心臓外科医と婚約していました

ファーストインプレッションまでは良かったのだ。

あの男の視線は、私に興味があると訴えかけていた。

でも、私の問いに答える()が30秒もかかるってどういうことだろう。

熟考するにもほどがある。

もちろんそれに過剰反応し、職業病が顔を出して婚活指南をしてしまった私が悪いのはわかってる。

けれど、あの男の全身から漂うやる気のなさに、どうしようもなく(いら)ついたのだ。

仮にも婚活の場で、女性側から声を掛けたのに。

いくらイケメンだろうが、医者だろうが、あんな態度で女性と接する男が、婚活を成功できるわけがない。

きっとあの男は、いままで自分からは何も動かず、勝手に女性が蜜に群がるカブトムシのように寄ってきたのだろう。

とはいえ、やはりあの場は私が折れるべきだった。

30秒待たされたとしても、にこやかに、相手の言葉を受け入れ、会話を続けていくのがセオリーだ。

完全に私の負け試合だ。

こんな失態、職場の誰にも絶対に知られたくない。
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