カーテンコールはまだ鳴らない。
沈黙は自然で、奇妙に心地よい。
さっきまでのファミレスのにぎやかさとは違い、
夜の街は少し冷たく、でも二人の間の空気はどこか温かい。
響華は小さく息を吐き、肩にかかる鞄の重さを調整する。
侑玖は、目の前を淡々と歩きながらも、時折響華の方に視線を向ける。
「……あのさ」
歩きながら、侑玖がぽつりと口を開いた。
響華は少し振り返るようにして顔を向ける。
「なに?」
「……今日、急だったのにありがとな。」
声は小さく、それでも真っ直ぐだった。
「......ん。」
響華はそれ以外特に返さず、前を向いたまま歩く。
それだけでも、侑玖の胸の奥のわだかまりが、少しだけほどけた気がした。
二人の足音が夜の街に規則正しく響く。
駅までの道のりは、短くも、少し特別に感じられた。