カーテンコールはまだ鳴らない。
料理が運ばれてくる。
鉄板の上でソースが跳ねる音。
ジュウ、と肉の焼ける匂い。
侑玖はフォークを持ち、いつもの調子で言う。
「いただきまーす!」
一口食べて、大袈裟に目を見開く。
「うまっ!やっぱ辛いの正義!」
明るい。
ちゃんと明るい。
でも。
ナイフを持つ手に、一瞬だけ力が入りすぎている。
響華はそれに気づかない。
気づいたとしても、きっと言わない。
鉄板から立ち上る湯気の向こう。
夜は、まだ静かだった。
そうして、料理をあっという間に平らげてしまった2人。
「……一瞬で食べ終わった」
響華が皿を片付けながら、軽く笑う。
「それな。腹パンパンだわ」
侑玖も満足そうに肩をすくめる。
二人は手早くお会計を済ませ、店を出た。
夜風が頬に当たり、ファミレスの明かりから解放された静けさが
心地いい。
「……帰ろっか」
響華が鞄を肩にかけながら訊く。
「だな。」
侑玖が答える。
街灯に照らされる歩道を、二人並んで歩き出した。