カーテンコールはまだ鳴らない。
若頭補佐は、侑玖の⼿元――銀のライターに⼀瞬だけ視線を落とし、
それから静かに⼝を開いた。
「余計な過去に、引っ張られるなよ」
その⾔葉に、⼼臓が嫌な⾳を⽴てた。
「お前はもう、こっち側の⼈間なんだからな。
変に後悔すると、重圧に苦しむのは⾃分だぞ。」
(……あぁ、そうだな)
侑玖は、笑ったまま頷いた。
「分かってますって」
でも、頭のどこかで、別の声が囁く。
――本当に?
喫煙所で⾒た、グレーのパンツスーツ姿。
煙草を吸う横顔。
変わらない声。
(……⽌めてほしいなんて、都合よすぎだろ)
⾃嘲気味に笑い、侑玖は再び煙を吸い込んだ。