カーテンコールはまだ鳴らない。

* * *

「……響華さん」

隣から聞こえた声に、響華は顔を上げた。

蓮が椅子に腰掛けたまま、こちらを見ている。

「少し、休憩しませんか」

短い言葉だったが、はっきりとした気遣いがそこにあった。

「……そうだね。行こっか」

二人は席を立ち、並んでオフィスを出る。

扉が閉まると、執務室の喧騒は一気に遠のいた。

廊下に設置された自動販売機の前で立ち止まり、

響華は軽く腕を組んで中身を眺める。

「朝から頭使いすぎて、糖分欲しい……」

そう呟きながら、缶コーヒーのボタンを押す。

隣では、蓮が迷いなく、響華と同じ缶コーヒー

――カフェオレを選んでいた。
< 83 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop