極上パイロットの一途な執愛
「おひとりで搭乗予定の吉村様ですね」
「そう。保安検査場は通過済みで、手荷物も預かってる」

 その言葉を聞き、時間を確認する。搭乗締め切りまではあと五分。
 それまでに搭乗口に現れなければ、貨物室からお客様が預けた手荷物だけを捜し出して降ろさなければならない。

 過去のテロや事件から、飛行機には持ち主のいない荷物は載せないというルールがあるからだ。

 貨物室を開けるとなれば、少なくとも出発予定時刻から十分は遅れてしまう。

 私は「わかりました」とうなずいて走り出した。

 飛行機は、一便の遅れがドミノ倒しのように後続の便に影響を与える。
 熊本行きはもちろん、ほかの便のお客様に迷惑をかけないためにも、なんとか捜し出さなきゃ。

 保安検査場を通過しているなら、制限区域内にいるはずだ。

「熊本便にご搭乗予定の、吉村様はいらっしゃいますか?」

 必死に名前を呼びながら、履き慣れないパンプスで走り回る。カフェやお土産屋さんを一軒ずつのぞいたけれど、それらしき人はいなかった。

 腕時計を確認すると、締め切りまであと二分。
 いったいどこにいるんだろう……。

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