極上パイロットの一途な執愛
 ベンチに座る私の横を通り過ぎた男性が、こちらを見下ろし小さく笑ったようだ。

 スマホで漫画を読みながらにやけている姿を見られてしまったんだろうか。

 頬を熱くし、慌てて画面を閉じる。そして顔を上げて振り返ると、その男性の後ろ姿が見えた。

 仕立てのいいコートを羽織り歩いていく姿は洗練されていて、目を引いた。後ろ姿でもかっこいいのが伝わってくる。

 通りすがりの人に笑われるほど、緩んだ顔をしていた自分が恥ずかしくなる。

 こんな場所で読んじゃだめだ。続きは家に帰ってからにしよう。
 そう反省しながらスマホをバッグの中にしまい、電車に乗るために立ち上がった。


 



 数日後、空港内の出発ロビーはたくさんの人でごったがえしていた。日本海側の地域を襲った猛烈な低気圧の影響で、欠航便が相次いだからだ。

 電光掲示板には『欠航』の赤い文字が並び、足止めをくらった乗客たちの苛立ちがロビー全体に満ちていた。

< 38 / 163 >

この作品をシェア

pagetop