極上パイロットの一途な執愛
 あの結婚の話は、私から断るべきだったんだ……。
 





 今までの結婚生活を振り返り、情けなさで胸が痛む。

 私は隣に座る蒼真さんを見上げ、その気持ちを説明するために口を開いた。

「私は、ずっと蒼真さんに我慢をさせてきたのが申し訳なかったんです。だからこれ以上迷惑をかけたくなくて、自分から部屋を出ていこうって……」

 私の言葉を遮るように、低いため息が響いた。

「まったくわかってないね」

 そうつぶやいた蒼真さんが、狭い車内で私を見つめる。

 なんだか蒼真さん、いつもと雰囲気が違う……。
 涼し気なその瞳には、普段は見せない男の色気がにじんでいた。

「わかってないって、どういう意味ですか……?」
「ようやく愛里を手に入れたんだ。俺はどんなことがあっても、君を手放すつもりはないよ」

 蒼真さんが挑発的な視線を私に向ける。

 こんな蒼真さんの顔を見るのは、初めてだった。緊張のせいか、勝手に鼓動が速くなる。
 私がごくりと喉を上下させたとき、タクシーが止まった。

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