それはただの面倒くさい男ですよ……!
「ああ、アーノルド様は最高ですわ、カッコよくて強くて優しくて!全部備えている男ですわ!」
自分の婚約者を自画自賛して愛され自慢?をしているのは我が妹のステファニーである。
しかし私が何ていうか……どうだかと思う顔をしていると、ステファニーは絡んでくる!
「お姉様?まさかお姉様ともあろうお方が、妹に嫉妬しているなんてことは無いですよね?素直に祝福したらどうです?」
「……あのね……まさか私が妹の幸せを嫉妬するほど浅い奴じゃないことは知っているでしょう?」
「……それならいいんですけど、何でこの理想的な婚約をお姉様は祝福しないので!?」
……まぁステファニーが言いたいことは分かる。
私も上手く言語化できないのだが、そんな都合がいい男がいるわけ無いと、心のどこかに警戒心が沸いているからなのである!
かといって根拠が無いことを言って、ステファニーを不安がらせるのもどうかと思うので、言語化できないもどかしさを感じているのである……!
「ねぇステファニー、アーノルド様のどこがそんなにカッコよくて、強くて優しいと思ったの?まぁ容姿に関しては確かにイケメンだなってのは分かりますけど……!」
「お姉様盗ったりしないでね?」
「……冗談にしても笑えないわ、妹の婚約者を奪いたくなるようなアーノルド様って素敵な方なの?」
「だから心配してるんじゃない!」
「……平気よ、そんな仮に素敵な方ならば、こんなにも愛している妹を捨てて、姉に走るなんて愚行するわけ無いじゃない。そもそも私にそういう気は無いけど、私が仮に《《酷い姉》》だとしても心配する事無いじゃない……!」
「流石お姉様ね!そういうところ冷静ですわ!」
……ステファニーほど浮かれてないだけよ……!
私がもっと冷静に分析できるのであれば、この違和感もきっと言語化できるのに……!
私はステファニーが言うのとは裏腹に自分の実力がもっとあればと思うのであった……!
ってなことをステファニーに言われたのよ……!
なんてことを幼馴染のヘタレ野郎に言う私……
……多分こいつ私のこと好きなんだよね、同じ伯爵家同士で釣り合いが取れているのに、どうして婚約を求めないのか……
言っておくけど、私は相手が自分のことを好いていると知っていながら助け船を出してあげるほど甘ちゃんじゃないの!
もっといい条件がもしもあったら遠慮なく行く気ですからね!
高く売りたいとかは無いが、安値で買いたたかれるほど自分を安く扱おうと思わないので……!
多分どうせ、自分は伯爵家の三男で、長女である私とはとか、本当にどうでもいい甘ったれレベルなことを思っているのでしょうけど、それくらいいくらでも許容範囲なんだからって、私はこの頼りなき奴と人生を共にするのに躊躇して、私からは助け船を出す気が起きないのである!
で、そのヘタレ野郎の幼馴染のサスロは、
「それで君もアーノルド様がいいと思っているのかい?」
などともう気持ち悪いヘタレ精神を出してきている。
あのね、貴方を妬かせるなんて浅ましい意図で言ってないわ!
ところでアーノルド様は侯爵家の令息なので、私やステファニー、サスロよりも身分が上なので、様付けをしているのである……!
「……そういうことを言ってるんじゃないの!私が妹の婚約者を奪いたいなんて浅い奴じゃないことも忘れたのかしら?そんなことはどうでもよくて、アーノルド様はどうなのよって聞いただけよ!」
「ご……ごめん!アーノルド様かぁ……僕は付き合いが無いから良くは知らないなぁ……!」
……なるほど、サスロはヘタレだから上位貴族に絡むなんてできるタイプでも無いから、意見を聞いても無駄だったかぁ……!
仕方ないのでこの話を終わらせようとすると……
「やっぱ女ってのはああいうカッコいい人がいいのかなぁ……」
などと寝言を言ってきてる。
はぁ……少なくてもまともに相手にバレてるレベルなのに口説けもしない男よりはマシでしょうねって、嫌味を言いたくなった気持ちを返せっつうの!
「さぁ?私はステファニーがアーノルド様はカッコよくて強くて優しい何ていうからそんな男本当にいるのかしら?って疑問から言っただけよ……!」
「……いるんじゃないか?世の中には凄い人がいるから!」
「私はそうは思わないってだけ」
「え?凄い男はいるだろ?まさかスナフキンはそんな男なんていないって思うほど、強い女なわけ?」
「……まさか!そこまで自分に自惚れてないわよ、でもね、そういう凄い人って私達のような凡人に分かりやすい優しさなんて無いじゃない!例えば王太子様とか別世界の方よ……!」
「なるほど!確かにそうかもな!」
うんおかげで私もサスロに説明するために言語化したことで気づいた。
そうだそんなに素敵な人ならば、分かりやすく強くて優しいなんて両立するわけが無いんだ!
だから違和感しか感じなかったんだ!
私はサスロに「話聞いてくれたおかげで……少しヒントになったわありがとう……」
とだけお礼を言うと、何か恥ずかしそうな顔をしている……
勘弁して欲しいなぁ……そういう表情でバレてないって顔をするほうが恥ずかしいから!
私は半分呆れと、半分は一応感謝をして去った。
サスロって自分で自分の価値を落としているタイプだよねとも思いながら……!
今日もアーノルド様とお会いして上機嫌になって帰って来るステファニー……
「お姉様、もうアーノルド様が私の運命のその人だったのですわ!」
……ここまでお花畑な価値観でも無かったはずが、何か突き抜けたな……と私は正直思うのだが……!ステファニーは違った!
「アーノルド様ったら、君と出会えたことが僕らの運命だったなんて、仰るのですわ、優しくて素敵だと思わない?」
……そういうのを素敵だと言う気持ちは多少分からなくはないが、
それって誰でも言える戯言じゃない……
別にそれはそれでいいけど、普通でも言えることを、さもカッコいいだの強いだの優しいだの賛美するのは違うんじゃない?
私はどうしてもそう思えて、なんだかなって顔をしていたから、ステファニーに怒られてしまう!
「お姉様?またしても私のアーノルド様を疑っているので!?」
「……いやそういうわけでは無いですが……!」
ステファニーのいつにない剣幕に押された自分に気づく……!
「じゃあ何故妹の幸せを心から祝福できないのです!お姉様ともあろうお方が本当に悲しくて寂しいですわよ!」
分かったわよ分かった!祝福しようでは無いか!
私がそこまで言われるのは心外なので言おうとしたら……
やはりブレーキがかかった!
いくら心外だからって、私はアーノルド様がおかしいと思っている。
いやろくに接したことも無い方なのに、サスロとの会話からおかしいことを確信している。
にも拘らずここで会ったことが無いからと言って、無責任に賛美していいのだろうか?
ステファニーが嫌いならばそれもいいだろうけど、もちろん可愛い妹だと思っている!
ならば無責任に賛美すべきでは無いのではないか!
……だからと言って、私が根拠なく問題何て言った所で、
ステファニーは激怒するだけで話は通じないだろう!
どうしたら?
悩んでいると……
「ふん、私はね前にお姉様に言われたように、お姉様がアーノルド様を狙うわけが無いと分かっているし、仮にそうでも取られるわけが無いってこともお姉様が言うように理解しているわ!だからあんなにも宝だと思っているアーノルド様とお姉様に会って頂きますわ!どうせ一族になるのだもの、今のうちに会って、お姉様もアーノルド様の素敵さを理解して、私を祝福するといいですわ!」
……乗りかかった船ね……
こうして私もアーノルド様に一度お会いすることになった!
願わくば、私の推測が杞憂でありますように!
でもね……私達凡人に分かるように強くて優しいなんて人が、本当に成り立つのか!
それが素敵であるというのは、私は絶対におかしいと思うの!
だって私達からしたら神のごとき王太子様は、そういう存在じゃないのだから!
次のデートの時に、アーノルド様がやってきた!
あらかじめステファニーが私も同行することを伝えてはいるが、
ステファニーの奴、とんでもないことを言い出したのであった!
「お姉様ったら、私が心配のあまり、付いてくるとか言い出すのよ、早く妹離れして欲しいですわ!」
……お前が付いてこいって言ったやんけ!
私は思いっきり突っ込んだが、優しい私?は、きっとアーノルド様の手前見栄を張ってるのだなと許すことにした……!
ああ、サービスし過ぎだなと思いながら……!
そしてアーノルド様が挨拶をする……
「ふふ、僕の可愛いステファニー、そうやって自分のお姉様に対して失礼なことを言ってはいけないよ……!僕はスナフキンお姉様とも仲良くしたいと思うんだ……!だって家族になる存在なのだから……!」
何て言っている……
何か言い方がひえ~とはなるも、言ってる内容は極めて真っ当なので、今の所、私が杞憂になるのか?と3ミリくらいは期待した……!
これ私の一番の期待は、実はアーノルド様が強くて優しいわけでは無いのにステファニーが盲目の余りそう信じ切っているケースだ。
この場合、アーノルド様はちょっとカッコつけているだけのお方で心配無用なのだが、本気で強くて優しいみたいなことを本人が思っていて、さらにステファニーが信じているとしたら、サスロと話した内容通り懸念なのである!
「すみません、いつもステファニーがお世話になっています、本日はご迷惑をおかけします!」
と私が丁寧に挨拶をしても、ステファニーは、
「お姉様、まるでお母様みたいですわよ」
なんてふざけたことを言ってくるも、アーノルド様は……
「いやいやいいお姉様では無いか!」
なんてフォローをするから、いやこれステファニーのほうが単に恋が盲目でおかしなことを思っているだけでは?
私はそう解釈するようになっていった……!
こうして迎えに来たアーノルド様の、ようは侯爵家の馬車に乗って、侯爵家の庭まで向かうことになった!
「……今日はスナフキンお姉様も来るということで、とびきり歓迎をさせるように頼んでおいてから楽しみにして下さいな……!」
などと馬車の中でアーノルド様は私に言うと、ステファニーは何故か……
「ということは普段私だけの時は手を抜いているので?」
などと下らないことを言い出す……!
あのさぁ……我が妹に呆れていると……
アーノルド様は……!
「……馬鹿を言ってはいけないよ、そうやってヤキモチを言う姿は可愛いけど、僕が一番大事にしているのはステファニー以外いないに決まっているでは無いか!」
何て言って、ステファニーを抱きしめだした……
……間違ってはいないけど、第三者の私の場違い感が辛い……!
ステファニーはますますメロメロだったらしく私に向かって、
「ほらアーノルド様は私の運命の人でしょう!」
なんてドヤ顔で語って来る……
……まだ分からないけど、確かに今の所間違っているとは思えない。
やはりステファニーフィルターで私が懸念をしただけで、実際は問題無い方なのでは?
そう思いだして安心すらして来たのであった……!
そして侯爵家の庭につくと、たくさんのお菓子などが用意されていて、歓迎されているのが伝わってきた!
「アーノルド様の家のお菓子ってとても素敵なのですよ!」
などとステファニーは告げて、確かにお菓子にそこまで強い執着の無い私でも、これは凄いんだろうなぁってのは何となく分かる!
「ああ、アーノルド様はもう私の運命ってのが分かったでしょう?認めなさいよ!」
なんてステファニーは私に告げてくるのだが、どうしても私は、
そうだね!と太鼓判が押せないのであった……
何故なのかは分からない、まだアーノルド様をよく知らないから?
いやそれだけじゃない、何て言うか……!
自分の感覚を言語化できない自分が悔しい!
そしてステファニーは「……お姉様見苦しいですわ!」
などと文句をつけてくる……
うん、私も悔しいけどステファニーの言う通りだと思う、言語化できないのに、何かおかしいだけを貫くって、まるで小意地悪い存在で、嫉妬じゃなきゃ正当化できず、私はステファニーに嫉妬するほど、浅い性格でも無いから、
本当に何で?自己不信になるレベルなのであった……!
そしてステファニーはお花を摘みに行くとトイレに向かうので……
私はアーノルド様と2人残されたが、何を話せばいいのだか!と困っていたら、
アーノルド様から話しかけてくるでは無いか!
「スナフキンお姉様、ステファニーは本当に可愛いと思うよ!」
何て物凄いドヤ顔で言ってくる。それについてはありがたいことなので……
「ええ、アーノルド様から愛して頂いて、ステファニーが幸せであることは、姉として感謝以外の言葉は浮かびませんわ!」
と挨拶すると……
「いやそういう事では無いんだ!」
などと言い出す、どういうことかしら?
「ステファニーはあれほど僕を称賛してくれて、何もかも愛してくれる完璧な子はいないと思うんだ」
……ん?ん?何が言いたいのかしら?
私がとりあえず、「ありがとうございます!」と返事だけしておくと……
「僕は自分からは照れて言えなかったが、お姉様から伝えて欲しい、僕は完璧なステファニーに愛されて、こんな幸せ者はいないと思うんだと!」
……何これ、大袈裟過ぎない?もちろんステファニーがアーノルド様の前ではカッコつけて、欠点を見せないようにしているのは予想が付く。
でもさぁ、姉の私から見て、ステファニーは欠点だらけよ?
もちろんそれで問題ってわけでは無いのだけど、完璧って評するアーノルド様、どこがおかしいわ?きっと冗談を言っているのかしら?
私はそう思うので、
「姉として、ステファニーを讃えてくれるのは嬉しいですが、まだまだステファニーも未熟なので……」
と私が思わず言ってしまったのが失敗だった!
「僕のステファニーは完璧だ!未熟なわけないだろう!」
などと突然怒鳴って来るでは無いか……!
私はドン引きしたのと怖かったから「すみませんでした!」
と思わず謝罪をしてしまったが、アーノルド様はネチネチと……
「スナフキンお姉様は、あの完璧なステファニーの姉だからどれだけ素晴らしいと期待していたのに残念だよ、まさか妹の粗さがしを言う方だったなんて!」
何て言ってくる……
い……いやそういうつもりでは無いんだけど、この人本当にステファニーを知っているの!?
私は困惑して何も言えないが、アーノルド様は止まらなかった!
「僕はね、ステファニーに出会ってから人生が変わったんだ、僕はステファニーがいるから輝けるんだ!それの邪魔をするのは、仮にお姉様であっても許さないからな!」
何て私に脅しをかけてくる……勘弁して!そんな気はないから!
私が困惑していると、ステファニーが帰って来る……
すると一瞬で豹変をして……
「やぁステファニーやっと帰ってきたんだね、僕はステファニーがいないと寂しかったよ……!」
などと言い出した……
「まぁアーノルド様ったら……!」
なんてうっとりしているが、この人どこかおかしくない?
私は間違いなく思った……
だがこれって言うべきなの?
一応愛されてるんだよね?
もう私はどう考えていいのか分からずにぶっちゃけパニックになった……!
「わ……私はお二人の邪魔をするのもなんだから、一度帰らせて頂きますわ……!」
正直私は逃げたと思う……
でも一度考えて落ち着かないとどうしたらいいのか分からないのだ!
その場で対応できる実力が欲しいとこの時ばかりはつくづく思ったのであった……
ステファニーごめんなさい、でも今すぐの緊急的な危機は無いでしょ?だから見捨てたわけでは無いから!
こうして私は1人家に帰り、どうしようと悩んだ時に、そうだまたサスロにでも話せばいい案が浮かぶかもということで、サスロに会うことにするのであった……!
……正直散々サスロをヘタレ扱いしながら、こういう時に会う私こそヘタレでは無いか!そういう情けない気持ちになりながらも、ステファニーのためだ!背に腹は代えられないのだ!そう思って……!
……サスロの家につくと、どうやらサスロはいるらしく、私は執事の方に、
「いきなりの訪問すみませんでした」と謝罪をする……
しかしサスロは現れて、
「スナフキン急に来るなんてどうかしたの?」
と言うでは無いか……
普段私からアポ無しで行くなんてこと無いですからね……!
「聞いて欲しいことがあるの!」
私の真剣な態度に困惑してる風だったが、ちょっと赤らめている、
まさか逆プロポーズされるとか思っているの?
相変わらずこいつは馬鹿だと少し思ったが、私もそんな馬鹿に相談する時点で人のことは言えないなとも……!
私が今日会ったことを言うと……
「アーノルド様ってそういう方だったんだ……」
何て言っている……!
「どういう方だって言いたいのよ……!」
「いやなんて言うかいかにも自分凄いんだぜ自信満々貴族の方なのかなと思ったけど、だって上位貴族だし?でもそうではなくて、その話だけ聞くと、ステファニーに凄く依存してるように思えたから……!」
「依存?」
「そうだろ、だってアーノルド様って完璧そうだなって俺から見て思ったんだけど、その話聞くとステファニーのおかげで救われたみたいな言い方じゃん!」
「なるほど、何であんた今日は妙に冴えてるのよ!」
「え?だって俺もカッコつけたいけどさぁ中々上手くいかないから……!」
何て言いながらまた恥ずかしそうにしている……!
普段ならばそういうのいいから!って言いたいが、なるほど、アーノルド様と似た葛藤があるってことかしら?
そう思っていると、
「ああ言っておくが、俺は自分がカッコ悪い奴とは分かっているけどな!悲しいけどな!」
何て言うので、なるほど分かってきた……
「ありがとうおかげでアーノルド様の正体が予測できたわ……!」
こう言うと、
「なんだよ正体って……」
って聞かれるので、
「多分だけどアーノルド様は、自分がどこかカッコ悪いみたいな自覚が無い方なのよ、だからサスロには感じない、私の違和感があるのよ!」
「なるほどなぁ!」
「だから何て言うか、まるで酔ってるかのように劇場的というか何というか……!」
「……よく分からないけど、何か凄いんだね……」
「ええ、私もあれを真似することはできないから、口では上手く説明できないけど、私達とは悪い意味で違う世界の人だなと、王太子様みたいに凄すぎてわからないのとはまた違う何か……!」
「な……なるほど!」
サスロのおかげで、アーノルド様の違和感がある程度言語化できた。
今日は割と心から感謝をして去ったが、これステファニーにどういえばいいの?
ぶっちゃけステファニーがそれに気づいてその上でそれでもいいと言うのならば、文句を言う私のほうが野暮である。
でも気づいていなくて何か誤解をしていて、そんなのは嫌だというのならば、結果的に騙されていることになる。
でもこんなことを上手く伝えられる自信が無い!
まして今のステファニーは恋に盲目状態になっているのだから!
……もともとそこまでお花畑な子では無かったから、その傾向はあったけど……!
きっとアーノルド様の劇場に巻き込まれて、ステファニーは狂ってしまったのだろう……!
もちろんそんな恋でも構わないというのは私も否定しないが、
理想の男と勘違いをして結婚をする?それが正しいとは、余計なお世話かもしれないが、姉としてどうしても思えないので、どうやって伝えるべきか……
私は家で悩むのであった……!
しかしステファニーが帰ってきた時に、私に文句を言うでは無いか!
「お姉様?何で途中で帰ったりしたのです、しかもアーノルド様が言うに、私達の関係をお姉様は反対しているって!?」
「……いや反対まではしていないですわ!」
「いいやアーノルド様はどうやら僕はスナフキンお姉さんに嫌われているみたいなんだ!とお嘆きになっていたわ!」
……あのさぁどうしたらそうすり替わるのかしら!?
私アーノルド様にステファニーと関わるな的なこと言いました!?
むしろステファニーのことを結果として悪く言うような形になって、そこを怒られた立場なんですけど!
「私そんなことを言ってないわ……!」
「嘘をつかないでよ!だったらあんな素敵で強い優しいアーノルド様がどうして悲しむのよ!」
……何て言うか、別にアーノルド様は洗脳とかしている気はないんだろうけど、
どこか狂った演技構造にステファニーは巻き込まれて飲まれているのね……!
私はアーノルド様に会った時の感想と印象、それから言動、サスロと話したことから、恐らくそうに違いないと確信したのであった……!
「……あのね、聞いてくれる?私がステファニーの幸せを妨害するような奴だと思う?」
「……そんなことは思ってないわよ!」
良かった……ここを疑われたら話にならないのだから!
「……じゃあそんな姉から一言言わせて頂くわ!」
「何かしら?」
「……私は別に嘘をついて、ステファニーを騙したりはしないってことよ!」
「……そんなこと分かってるわ?」
「……それを信じ切ることはできる?」
「……いつものお姉様らしくないじゃない!どういうこと!?」
「……信じ切れるのかだけ聞いているのよ!」
「信じるわよ!一体なんなのさ!」
良かった……言質を取った!正直ズルいとは思っているが、ここまで言わないと駄目だからって分かるからである!
「じゃあ本当のことを言うわ、私はね、アーノルド様に嫌い何て言ってないのよ!」
「アーノルド様が嘘をついていると言うの!?」
「というよりも別ね……」
「どういうこと!?」
「……簡単に言うと、アーノルド様はあの時に、ステファニーがトイレに席を外した時に、ステファニーのことを完璧と讃えて、僕がいかに救われてるか、恥ずかしいから姉である私の口から伝えて欲しいと伝言を頼まれたのよ!」
「……素敵な話じゃない!!!!」
ステファニーがうっとりしてるところ悪いんだが……
「……でもね、姉としてこれは悪意があってのことじゃないのよ?当然普段のステファニーを知ってる私からしたら、あんたが完璧なわけでもなく、欠点もあるから、つい世間話的に、妹を讃えてくれるのは嬉しいけど、まだ未熟ですからって言ってしまったのよ……!」
「……お姉様らしいけどそれでどうしたの?」
「……そうしたらそうしたら……」
正直あの理不尽さを思い出すだけで気持ち悪いと思う自分に気づいた!
しかし言わないとね!
「まるで完璧なステファニーを私が傷つけて妬んでいるみたいなことを言って来たのがアーノルド様なのよ!私がそんな気がないことは、ステファニーが一番知ってるでしょう!?」
「……」
ステファニーが黙ってしまった!
……いつもあまり考え無しに話すステファニーがこれほど悩んだのは、生まれて初めて見るかもしれない……
「ど……どういうこと!?」
「……そういうことよ……」
「……」
何て言うか、きっとだけどステファニーの中で、今の新しい新情報を元に考えるほど、色々アーノルド様の違和感が思い出から思い出されているのかなと思うのである……!
「……どうしてアーノルド様はそんなことで怒ったの!?」
「……分からないけど、さっきサスロに相談したら、きっとアーノルド様はステファニーに依存をしているからではと……!」
「馬鹿言わないで!あのカッコいい強くて優しいアーノルド様がそんなわけないじゃな………………!?」
ああ、力強く否定しようとしたら、思い当たるところがあるのね……
「い……言われて見れば、アーノルド様って侯爵家の三男という立派な立場なのに、自分で言うのもなんだけど、私のことを讃えてきて、それが気持ちよかったけど、確かにおかしいわ!だって私なんか抜きにも立派な方のはずじゃない!」
「……」
私が黙っていると……
「きっとそれは愛だからって思っていたけど、もしかして違うの!?」
ステファニーが泣きそうになりながら混乱している感じなので、私はステファニーを抱きしめるのであった……
「お姉ちゃん……」
別に幼児帰りをしたわけじゃないだろうが、昔の言い方をするステファニーに気づくのであった……!
ステファニーは落ち着いたのか、私に向かって言う……
「今思えばだけど、本当に今思えばだけど、後付け的だけど、全部辻褄が合うから言うけど、アーノルド様って舞台をしているような方で、私を主演女優にしたいだけだったのですわ!それを私は愛だと錯覚していた!」
「……サスロの言ったことと合わせると、自分に自信が無いけど、自覚が無いから、ステファニーを輝かせることで、間接的に自信を得ようとしていた、これが答えでいいかしら?」
「……お姉様の言う通りだと思いますわ……!」
このように気づくと、アーノルド様のあの気持ち悪さがすべて辻褄が合うのだ!
そしてステファニーはというと、もうアーノルド様を信じることができなくなったのか、婚約を泣きながら破棄するように頼むと、アーノルド様は発狂したそうな……!
「許さんぞスナフキン!よくも僕のステファニーを洗脳したな!」
その発狂する様から、何て言うかある意味自爆と言うか、ステファニーが断ったのは当然だと、お父様お母様、それから侯爵家の方も理解して下さり、ある意味円満に無理やりに婚約破棄が成立した……
アーノルド様はと言うと、気が触れたということで、軟禁されたそうな……!
私はすべてをサスロに話すと、
「……アーノルド様みたいにだけはなりたくねぇ!それから一言言わせてもらう!俺はやっぱスナフキンが好きだ!結婚して欲しい!」
……このボケ遅いわ!
良かったわね、私にもっといい縁談が来てたら、そっちに絶対応じていたから!
と普段なら強がって言いたいところだが、今回は本当に助かったので、素直に応じたら、
サスロに気味悪がられたのであった……
わ……私ってそういう扱いなの!?
自分の婚約者を自画自賛して愛され自慢?をしているのは我が妹のステファニーである。
しかし私が何ていうか……どうだかと思う顔をしていると、ステファニーは絡んでくる!
「お姉様?まさかお姉様ともあろうお方が、妹に嫉妬しているなんてことは無いですよね?素直に祝福したらどうです?」
「……あのね……まさか私が妹の幸せを嫉妬するほど浅い奴じゃないことは知っているでしょう?」
「……それならいいんですけど、何でこの理想的な婚約をお姉様は祝福しないので!?」
……まぁステファニーが言いたいことは分かる。
私も上手く言語化できないのだが、そんな都合がいい男がいるわけ無いと、心のどこかに警戒心が沸いているからなのである!
かといって根拠が無いことを言って、ステファニーを不安がらせるのもどうかと思うので、言語化できないもどかしさを感じているのである……!
「ねぇステファニー、アーノルド様のどこがそんなにカッコよくて、強くて優しいと思ったの?まぁ容姿に関しては確かにイケメンだなってのは分かりますけど……!」
「お姉様盗ったりしないでね?」
「……冗談にしても笑えないわ、妹の婚約者を奪いたくなるようなアーノルド様って素敵な方なの?」
「だから心配してるんじゃない!」
「……平気よ、そんな仮に素敵な方ならば、こんなにも愛している妹を捨てて、姉に走るなんて愚行するわけ無いじゃない。そもそも私にそういう気は無いけど、私が仮に《《酷い姉》》だとしても心配する事無いじゃない……!」
「流石お姉様ね!そういうところ冷静ですわ!」
……ステファニーほど浮かれてないだけよ……!
私がもっと冷静に分析できるのであれば、この違和感もきっと言語化できるのに……!
私はステファニーが言うのとは裏腹に自分の実力がもっとあればと思うのであった……!
ってなことをステファニーに言われたのよ……!
なんてことを幼馴染のヘタレ野郎に言う私……
……多分こいつ私のこと好きなんだよね、同じ伯爵家同士で釣り合いが取れているのに、どうして婚約を求めないのか……
言っておくけど、私は相手が自分のことを好いていると知っていながら助け船を出してあげるほど甘ちゃんじゃないの!
もっといい条件がもしもあったら遠慮なく行く気ですからね!
高く売りたいとかは無いが、安値で買いたたかれるほど自分を安く扱おうと思わないので……!
多分どうせ、自分は伯爵家の三男で、長女である私とはとか、本当にどうでもいい甘ったれレベルなことを思っているのでしょうけど、それくらいいくらでも許容範囲なんだからって、私はこの頼りなき奴と人生を共にするのに躊躇して、私からは助け船を出す気が起きないのである!
で、そのヘタレ野郎の幼馴染のサスロは、
「それで君もアーノルド様がいいと思っているのかい?」
などともう気持ち悪いヘタレ精神を出してきている。
あのね、貴方を妬かせるなんて浅ましい意図で言ってないわ!
ところでアーノルド様は侯爵家の令息なので、私やステファニー、サスロよりも身分が上なので、様付けをしているのである……!
「……そういうことを言ってるんじゃないの!私が妹の婚約者を奪いたいなんて浅い奴じゃないことも忘れたのかしら?そんなことはどうでもよくて、アーノルド様はどうなのよって聞いただけよ!」
「ご……ごめん!アーノルド様かぁ……僕は付き合いが無いから良くは知らないなぁ……!」
……なるほど、サスロはヘタレだから上位貴族に絡むなんてできるタイプでも無いから、意見を聞いても無駄だったかぁ……!
仕方ないのでこの話を終わらせようとすると……
「やっぱ女ってのはああいうカッコいい人がいいのかなぁ……」
などと寝言を言ってきてる。
はぁ……少なくてもまともに相手にバレてるレベルなのに口説けもしない男よりはマシでしょうねって、嫌味を言いたくなった気持ちを返せっつうの!
「さぁ?私はステファニーがアーノルド様はカッコよくて強くて優しい何ていうからそんな男本当にいるのかしら?って疑問から言っただけよ……!」
「……いるんじゃないか?世の中には凄い人がいるから!」
「私はそうは思わないってだけ」
「え?凄い男はいるだろ?まさかスナフキンはそんな男なんていないって思うほど、強い女なわけ?」
「……まさか!そこまで自分に自惚れてないわよ、でもね、そういう凄い人って私達のような凡人に分かりやすい優しさなんて無いじゃない!例えば王太子様とか別世界の方よ……!」
「なるほど!確かにそうかもな!」
うんおかげで私もサスロに説明するために言語化したことで気づいた。
そうだそんなに素敵な人ならば、分かりやすく強くて優しいなんて両立するわけが無いんだ!
だから違和感しか感じなかったんだ!
私はサスロに「話聞いてくれたおかげで……少しヒントになったわありがとう……」
とだけお礼を言うと、何か恥ずかしそうな顔をしている……
勘弁して欲しいなぁ……そういう表情でバレてないって顔をするほうが恥ずかしいから!
私は半分呆れと、半分は一応感謝をして去った。
サスロって自分で自分の価値を落としているタイプだよねとも思いながら……!
今日もアーノルド様とお会いして上機嫌になって帰って来るステファニー……
「お姉様、もうアーノルド様が私の運命のその人だったのですわ!」
……ここまでお花畑な価値観でも無かったはずが、何か突き抜けたな……と私は正直思うのだが……!ステファニーは違った!
「アーノルド様ったら、君と出会えたことが僕らの運命だったなんて、仰るのですわ、優しくて素敵だと思わない?」
……そういうのを素敵だと言う気持ちは多少分からなくはないが、
それって誰でも言える戯言じゃない……
別にそれはそれでいいけど、普通でも言えることを、さもカッコいいだの強いだの優しいだの賛美するのは違うんじゃない?
私はどうしてもそう思えて、なんだかなって顔をしていたから、ステファニーに怒られてしまう!
「お姉様?またしても私のアーノルド様を疑っているので!?」
「……いやそういうわけでは無いですが……!」
ステファニーのいつにない剣幕に押された自分に気づく……!
「じゃあ何故妹の幸せを心から祝福できないのです!お姉様ともあろうお方が本当に悲しくて寂しいですわよ!」
分かったわよ分かった!祝福しようでは無いか!
私がそこまで言われるのは心外なので言おうとしたら……
やはりブレーキがかかった!
いくら心外だからって、私はアーノルド様がおかしいと思っている。
いやろくに接したことも無い方なのに、サスロとの会話からおかしいことを確信している。
にも拘らずここで会ったことが無いからと言って、無責任に賛美していいのだろうか?
ステファニーが嫌いならばそれもいいだろうけど、もちろん可愛い妹だと思っている!
ならば無責任に賛美すべきでは無いのではないか!
……だからと言って、私が根拠なく問題何て言った所で、
ステファニーは激怒するだけで話は通じないだろう!
どうしたら?
悩んでいると……
「ふん、私はね前にお姉様に言われたように、お姉様がアーノルド様を狙うわけが無いと分かっているし、仮にそうでも取られるわけが無いってこともお姉様が言うように理解しているわ!だからあんなにも宝だと思っているアーノルド様とお姉様に会って頂きますわ!どうせ一族になるのだもの、今のうちに会って、お姉様もアーノルド様の素敵さを理解して、私を祝福するといいですわ!」
……乗りかかった船ね……
こうして私もアーノルド様に一度お会いすることになった!
願わくば、私の推測が杞憂でありますように!
でもね……私達凡人に分かるように強くて優しいなんて人が、本当に成り立つのか!
それが素敵であるというのは、私は絶対におかしいと思うの!
だって私達からしたら神のごとき王太子様は、そういう存在じゃないのだから!
次のデートの時に、アーノルド様がやってきた!
あらかじめステファニーが私も同行することを伝えてはいるが、
ステファニーの奴、とんでもないことを言い出したのであった!
「お姉様ったら、私が心配のあまり、付いてくるとか言い出すのよ、早く妹離れして欲しいですわ!」
……お前が付いてこいって言ったやんけ!
私は思いっきり突っ込んだが、優しい私?は、きっとアーノルド様の手前見栄を張ってるのだなと許すことにした……!
ああ、サービスし過ぎだなと思いながら……!
そしてアーノルド様が挨拶をする……
「ふふ、僕の可愛いステファニー、そうやって自分のお姉様に対して失礼なことを言ってはいけないよ……!僕はスナフキンお姉様とも仲良くしたいと思うんだ……!だって家族になる存在なのだから……!」
何て言っている……
何か言い方がひえ~とはなるも、言ってる内容は極めて真っ当なので、今の所、私が杞憂になるのか?と3ミリくらいは期待した……!
これ私の一番の期待は、実はアーノルド様が強くて優しいわけでは無いのにステファニーが盲目の余りそう信じ切っているケースだ。
この場合、アーノルド様はちょっとカッコつけているだけのお方で心配無用なのだが、本気で強くて優しいみたいなことを本人が思っていて、さらにステファニーが信じているとしたら、サスロと話した内容通り懸念なのである!
「すみません、いつもステファニーがお世話になっています、本日はご迷惑をおかけします!」
と私が丁寧に挨拶をしても、ステファニーは、
「お姉様、まるでお母様みたいですわよ」
なんてふざけたことを言ってくるも、アーノルド様は……
「いやいやいいお姉様では無いか!」
なんてフォローをするから、いやこれステファニーのほうが単に恋が盲目でおかしなことを思っているだけでは?
私はそう解釈するようになっていった……!
こうして迎えに来たアーノルド様の、ようは侯爵家の馬車に乗って、侯爵家の庭まで向かうことになった!
「……今日はスナフキンお姉様も来るということで、とびきり歓迎をさせるように頼んでおいてから楽しみにして下さいな……!」
などと馬車の中でアーノルド様は私に言うと、ステファニーは何故か……
「ということは普段私だけの時は手を抜いているので?」
などと下らないことを言い出す……!
あのさぁ……我が妹に呆れていると……
アーノルド様は……!
「……馬鹿を言ってはいけないよ、そうやってヤキモチを言う姿は可愛いけど、僕が一番大事にしているのはステファニー以外いないに決まっているでは無いか!」
何て言って、ステファニーを抱きしめだした……
……間違ってはいないけど、第三者の私の場違い感が辛い……!
ステファニーはますますメロメロだったらしく私に向かって、
「ほらアーノルド様は私の運命の人でしょう!」
なんてドヤ顔で語って来る……
……まだ分からないけど、確かに今の所間違っているとは思えない。
やはりステファニーフィルターで私が懸念をしただけで、実際は問題無い方なのでは?
そう思いだして安心すらして来たのであった……!
そして侯爵家の庭につくと、たくさんのお菓子などが用意されていて、歓迎されているのが伝わってきた!
「アーノルド様の家のお菓子ってとても素敵なのですよ!」
などとステファニーは告げて、確かにお菓子にそこまで強い執着の無い私でも、これは凄いんだろうなぁってのは何となく分かる!
「ああ、アーノルド様はもう私の運命ってのが分かったでしょう?認めなさいよ!」
なんてステファニーは私に告げてくるのだが、どうしても私は、
そうだね!と太鼓判が押せないのであった……
何故なのかは分からない、まだアーノルド様をよく知らないから?
いやそれだけじゃない、何て言うか……!
自分の感覚を言語化できない自分が悔しい!
そしてステファニーは「……お姉様見苦しいですわ!」
などと文句をつけてくる……
うん、私も悔しいけどステファニーの言う通りだと思う、言語化できないのに、何かおかしいだけを貫くって、まるで小意地悪い存在で、嫉妬じゃなきゃ正当化できず、私はステファニーに嫉妬するほど、浅い性格でも無いから、
本当に何で?自己不信になるレベルなのであった……!
そしてステファニーはお花を摘みに行くとトイレに向かうので……
私はアーノルド様と2人残されたが、何を話せばいいのだか!と困っていたら、
アーノルド様から話しかけてくるでは無いか!
「スナフキンお姉様、ステファニーは本当に可愛いと思うよ!」
何て物凄いドヤ顔で言ってくる。それについてはありがたいことなので……
「ええ、アーノルド様から愛して頂いて、ステファニーが幸せであることは、姉として感謝以外の言葉は浮かびませんわ!」
と挨拶すると……
「いやそういう事では無いんだ!」
などと言い出す、どういうことかしら?
「ステファニーはあれほど僕を称賛してくれて、何もかも愛してくれる完璧な子はいないと思うんだ」
……ん?ん?何が言いたいのかしら?
私がとりあえず、「ありがとうございます!」と返事だけしておくと……
「僕は自分からは照れて言えなかったが、お姉様から伝えて欲しい、僕は完璧なステファニーに愛されて、こんな幸せ者はいないと思うんだと!」
……何これ、大袈裟過ぎない?もちろんステファニーがアーノルド様の前ではカッコつけて、欠点を見せないようにしているのは予想が付く。
でもさぁ、姉の私から見て、ステファニーは欠点だらけよ?
もちろんそれで問題ってわけでは無いのだけど、完璧って評するアーノルド様、どこがおかしいわ?きっと冗談を言っているのかしら?
私はそう思うので、
「姉として、ステファニーを讃えてくれるのは嬉しいですが、まだまだステファニーも未熟なので……」
と私が思わず言ってしまったのが失敗だった!
「僕のステファニーは完璧だ!未熟なわけないだろう!」
などと突然怒鳴って来るでは無いか……!
私はドン引きしたのと怖かったから「すみませんでした!」
と思わず謝罪をしてしまったが、アーノルド様はネチネチと……
「スナフキンお姉様は、あの完璧なステファニーの姉だからどれだけ素晴らしいと期待していたのに残念だよ、まさか妹の粗さがしを言う方だったなんて!」
何て言ってくる……
い……いやそういうつもりでは無いんだけど、この人本当にステファニーを知っているの!?
私は困惑して何も言えないが、アーノルド様は止まらなかった!
「僕はね、ステファニーに出会ってから人生が変わったんだ、僕はステファニーがいるから輝けるんだ!それの邪魔をするのは、仮にお姉様であっても許さないからな!」
何て私に脅しをかけてくる……勘弁して!そんな気はないから!
私が困惑していると、ステファニーが帰って来る……
すると一瞬で豹変をして……
「やぁステファニーやっと帰ってきたんだね、僕はステファニーがいないと寂しかったよ……!」
などと言い出した……
「まぁアーノルド様ったら……!」
なんてうっとりしているが、この人どこかおかしくない?
私は間違いなく思った……
だがこれって言うべきなの?
一応愛されてるんだよね?
もう私はどう考えていいのか分からずにぶっちゃけパニックになった……!
「わ……私はお二人の邪魔をするのもなんだから、一度帰らせて頂きますわ……!」
正直私は逃げたと思う……
でも一度考えて落ち着かないとどうしたらいいのか分からないのだ!
その場で対応できる実力が欲しいとこの時ばかりはつくづく思ったのであった……
ステファニーごめんなさい、でも今すぐの緊急的な危機は無いでしょ?だから見捨てたわけでは無いから!
こうして私は1人家に帰り、どうしようと悩んだ時に、そうだまたサスロにでも話せばいい案が浮かぶかもということで、サスロに会うことにするのであった……!
……正直散々サスロをヘタレ扱いしながら、こういう時に会う私こそヘタレでは無いか!そういう情けない気持ちになりながらも、ステファニーのためだ!背に腹は代えられないのだ!そう思って……!
……サスロの家につくと、どうやらサスロはいるらしく、私は執事の方に、
「いきなりの訪問すみませんでした」と謝罪をする……
しかしサスロは現れて、
「スナフキン急に来るなんてどうかしたの?」
と言うでは無いか……
普段私からアポ無しで行くなんてこと無いですからね……!
「聞いて欲しいことがあるの!」
私の真剣な態度に困惑してる風だったが、ちょっと赤らめている、
まさか逆プロポーズされるとか思っているの?
相変わらずこいつは馬鹿だと少し思ったが、私もそんな馬鹿に相談する時点で人のことは言えないなとも……!
私が今日会ったことを言うと……
「アーノルド様ってそういう方だったんだ……」
何て言っている……!
「どういう方だって言いたいのよ……!」
「いやなんて言うかいかにも自分凄いんだぜ自信満々貴族の方なのかなと思ったけど、だって上位貴族だし?でもそうではなくて、その話だけ聞くと、ステファニーに凄く依存してるように思えたから……!」
「依存?」
「そうだろ、だってアーノルド様って完璧そうだなって俺から見て思ったんだけど、その話聞くとステファニーのおかげで救われたみたいな言い方じゃん!」
「なるほど、何であんた今日は妙に冴えてるのよ!」
「え?だって俺もカッコつけたいけどさぁ中々上手くいかないから……!」
何て言いながらまた恥ずかしそうにしている……!
普段ならばそういうのいいから!って言いたいが、なるほど、アーノルド様と似た葛藤があるってことかしら?
そう思っていると、
「ああ言っておくが、俺は自分がカッコ悪い奴とは分かっているけどな!悲しいけどな!」
何て言うので、なるほど分かってきた……
「ありがとうおかげでアーノルド様の正体が予測できたわ……!」
こう言うと、
「なんだよ正体って……」
って聞かれるので、
「多分だけどアーノルド様は、自分がどこかカッコ悪いみたいな自覚が無い方なのよ、だからサスロには感じない、私の違和感があるのよ!」
「なるほどなぁ!」
「だから何て言うか、まるで酔ってるかのように劇場的というか何というか……!」
「……よく分からないけど、何か凄いんだね……」
「ええ、私もあれを真似することはできないから、口では上手く説明できないけど、私達とは悪い意味で違う世界の人だなと、王太子様みたいに凄すぎてわからないのとはまた違う何か……!」
「な……なるほど!」
サスロのおかげで、アーノルド様の違和感がある程度言語化できた。
今日は割と心から感謝をして去ったが、これステファニーにどういえばいいの?
ぶっちゃけステファニーがそれに気づいてその上でそれでもいいと言うのならば、文句を言う私のほうが野暮である。
でも気づいていなくて何か誤解をしていて、そんなのは嫌だというのならば、結果的に騙されていることになる。
でもこんなことを上手く伝えられる自信が無い!
まして今のステファニーは恋に盲目状態になっているのだから!
……もともとそこまでお花畑な子では無かったから、その傾向はあったけど……!
きっとアーノルド様の劇場に巻き込まれて、ステファニーは狂ってしまったのだろう……!
もちろんそんな恋でも構わないというのは私も否定しないが、
理想の男と勘違いをして結婚をする?それが正しいとは、余計なお世話かもしれないが、姉としてどうしても思えないので、どうやって伝えるべきか……
私は家で悩むのであった……!
しかしステファニーが帰ってきた時に、私に文句を言うでは無いか!
「お姉様?何で途中で帰ったりしたのです、しかもアーノルド様が言うに、私達の関係をお姉様は反対しているって!?」
「……いや反対まではしていないですわ!」
「いいやアーノルド様はどうやら僕はスナフキンお姉さんに嫌われているみたいなんだ!とお嘆きになっていたわ!」
……あのさぁどうしたらそうすり替わるのかしら!?
私アーノルド様にステファニーと関わるな的なこと言いました!?
むしろステファニーのことを結果として悪く言うような形になって、そこを怒られた立場なんですけど!
「私そんなことを言ってないわ……!」
「嘘をつかないでよ!だったらあんな素敵で強い優しいアーノルド様がどうして悲しむのよ!」
……何て言うか、別にアーノルド様は洗脳とかしている気はないんだろうけど、
どこか狂った演技構造にステファニーは巻き込まれて飲まれているのね……!
私はアーノルド様に会った時の感想と印象、それから言動、サスロと話したことから、恐らくそうに違いないと確信したのであった……!
「……あのね、聞いてくれる?私がステファニーの幸せを妨害するような奴だと思う?」
「……そんなことは思ってないわよ!」
良かった……ここを疑われたら話にならないのだから!
「……じゃあそんな姉から一言言わせて頂くわ!」
「何かしら?」
「……私は別に嘘をついて、ステファニーを騙したりはしないってことよ!」
「……そんなこと分かってるわ?」
「……それを信じ切ることはできる?」
「……いつものお姉様らしくないじゃない!どういうこと!?」
「……信じ切れるのかだけ聞いているのよ!」
「信じるわよ!一体なんなのさ!」
良かった……言質を取った!正直ズルいとは思っているが、ここまで言わないと駄目だからって分かるからである!
「じゃあ本当のことを言うわ、私はね、アーノルド様に嫌い何て言ってないのよ!」
「アーノルド様が嘘をついていると言うの!?」
「というよりも別ね……」
「どういうこと!?」
「……簡単に言うと、アーノルド様はあの時に、ステファニーがトイレに席を外した時に、ステファニーのことを完璧と讃えて、僕がいかに救われてるか、恥ずかしいから姉である私の口から伝えて欲しいと伝言を頼まれたのよ!」
「……素敵な話じゃない!!!!」
ステファニーがうっとりしてるところ悪いんだが……
「……でもね、姉としてこれは悪意があってのことじゃないのよ?当然普段のステファニーを知ってる私からしたら、あんたが完璧なわけでもなく、欠点もあるから、つい世間話的に、妹を讃えてくれるのは嬉しいけど、まだ未熟ですからって言ってしまったのよ……!」
「……お姉様らしいけどそれでどうしたの?」
「……そうしたらそうしたら……」
正直あの理不尽さを思い出すだけで気持ち悪いと思う自分に気づいた!
しかし言わないとね!
「まるで完璧なステファニーを私が傷つけて妬んでいるみたいなことを言って来たのがアーノルド様なのよ!私がそんな気がないことは、ステファニーが一番知ってるでしょう!?」
「……」
ステファニーが黙ってしまった!
……いつもあまり考え無しに話すステファニーがこれほど悩んだのは、生まれて初めて見るかもしれない……
「ど……どういうこと!?」
「……そういうことよ……」
「……」
何て言うか、きっとだけどステファニーの中で、今の新しい新情報を元に考えるほど、色々アーノルド様の違和感が思い出から思い出されているのかなと思うのである……!
「……どうしてアーノルド様はそんなことで怒ったの!?」
「……分からないけど、さっきサスロに相談したら、きっとアーノルド様はステファニーに依存をしているからではと……!」
「馬鹿言わないで!あのカッコいい強くて優しいアーノルド様がそんなわけないじゃな………………!?」
ああ、力強く否定しようとしたら、思い当たるところがあるのね……
「い……言われて見れば、アーノルド様って侯爵家の三男という立派な立場なのに、自分で言うのもなんだけど、私のことを讃えてきて、それが気持ちよかったけど、確かにおかしいわ!だって私なんか抜きにも立派な方のはずじゃない!」
「……」
私が黙っていると……
「きっとそれは愛だからって思っていたけど、もしかして違うの!?」
ステファニーが泣きそうになりながら混乱している感じなので、私はステファニーを抱きしめるのであった……
「お姉ちゃん……」
別に幼児帰りをしたわけじゃないだろうが、昔の言い方をするステファニーに気づくのであった……!
ステファニーは落ち着いたのか、私に向かって言う……
「今思えばだけど、本当に今思えばだけど、後付け的だけど、全部辻褄が合うから言うけど、アーノルド様って舞台をしているような方で、私を主演女優にしたいだけだったのですわ!それを私は愛だと錯覚していた!」
「……サスロの言ったことと合わせると、自分に自信が無いけど、自覚が無いから、ステファニーを輝かせることで、間接的に自信を得ようとしていた、これが答えでいいかしら?」
「……お姉様の言う通りだと思いますわ……!」
このように気づくと、アーノルド様のあの気持ち悪さがすべて辻褄が合うのだ!
そしてステファニーはというと、もうアーノルド様を信じることができなくなったのか、婚約を泣きながら破棄するように頼むと、アーノルド様は発狂したそうな……!
「許さんぞスナフキン!よくも僕のステファニーを洗脳したな!」
その発狂する様から、何て言うかある意味自爆と言うか、ステファニーが断ったのは当然だと、お父様お母様、それから侯爵家の方も理解して下さり、ある意味円満に無理やりに婚約破棄が成立した……
アーノルド様はと言うと、気が触れたということで、軟禁されたそうな……!
私はすべてをサスロに話すと、
「……アーノルド様みたいにだけはなりたくねぇ!それから一言言わせてもらう!俺はやっぱスナフキンが好きだ!結婚して欲しい!」
……このボケ遅いわ!
良かったわね、私にもっといい縁談が来てたら、そっちに絶対応じていたから!
と普段なら強がって言いたいところだが、今回は本当に助かったので、素直に応じたら、
サスロに気味悪がられたのであった……
わ……私ってそういう扱いなの!?

