没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
だが、その前に。

――ガンッ。

鋭い音が響き、殿下の剣が魔物の爪を受け止めた。

「……遅い」

低く吐き捨てるように言い、すぐさま反撃に転じる。

流れるような動き。無駄のない一撃。

魔物の体に、深い傷が刻まれる。

(すごい……)

思わず見入ってしまう。

これが、皇太子として鍛えられた力。

そのはずなのに――

「……っ」

わずかに、殿下の動きが鈍った。

(……え?)

次の瞬間、魔物が大きく腕を振り上げる。

避けきれない。

「殿下――!」

叫んだ時には、もう遅かった。

――ズッ。

鈍い音と共に、殿下の肩が大きく裂かれる。

「……っ!」

血が、鮮やかに飛び散った。

「……問題ない」

低く押し殺した声。

けれど、その足取りがわずかに揺れる。
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