没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています

第4章 覚醒の引き金

その日の討伐は、これまでとは明らかに様子が違っていた。

空気が重い。地面に広がる穢土も、より濃く、深い。

(……強い)

直感で分かる。

この場所にいる魔物は、今までとは比べものにならない。

「離れるな。俺の後ろにいろ」

アルセイド殿下が短く言う。

「……はい」

私は頷き、少し後ろへ下がる。

その背中は、迷いなく前を向いていた。

やがて、森の奥から気配が現れる。

――低く唸る声。黒く歪んだ影が、ゆっくりと姿を現した。

(……大きい……)

これまで見てきた魔物よりも、一回り以上大きい。

全身から漂う穢れが、空気を震わせている。

「……来る」

殿下が剣を構えた瞬間、魔物が地を蹴った。

速い。一瞬で距離を詰められる。

(……っ!)

思わず息を呑む。
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