没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
殿下は、迷いなく言い切った。

「君と離れる気はない」

その一言に、胸が大きく揺れる。

(……そんな……)

予想していなかったわけじゃない。

それでも、はっきりと言われると、言葉を失う。

「……君が」

ゆっくりと、距離が近づく。

「皇太子妃になるまで、通い続ける」

(……え……)

思わず息を呑む。

それは――あまりにも真っ直ぐで。

あまりにも、重い言葉。

「でも……私は……」

言いかける。身分も、立場も、もう何もない。

そんな私が――

「関係ない」

すぐに、遮られる。

「他の女では、意味がない」

低く、はっきりとした声。

「俺が欲しいのは、お前だけだ」

その瞳には、一切の迷いがなかった。

逃げ場なんて、どこにもない。
< 83 / 91 >

この作品をシェア

pagetop