没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
それからというもの――

アルセイド殿下は、毎日のように私の屋敷を訪れるようになった。

朝も、昼も、そして夜も。

扉を開ければ、そこにいる。当たり前のように。

「……また、来てくださったんですね」

少し困ったようにそう言うと、殿下は短く答える。

「ああ」

それだけ。けれど、その声には迷いがない。

(どうして……)

聖女ではなくなった私に、もう何の価値もないはずなのに。

それでも変わらず、ここに来る。

「……殿下」

夕暮れの中、向かい合って座りながら、私はそっと問いかけた。

「いつまで、ここに通うおつもりですか……?」

言いながら、自分でも少しだけ怖かった。

もし、答えが――終わりを示すものだったら。

けれど。

「……決まっている」
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