没落令嬢ですが聖女になった途端、婚約破棄した皇太子に溺愛されています
「……そこまで言うのか」

重い声が、玉座の間に響いた。

アルセイド殿下は、ただまっすぐに国王陛下を見据えている。

「はい」

迷いのない返答。

「私は、セレスティアを望みます」

その言葉に、周囲の重臣たちがざわめく。

「彼女はすでに聖女の任を解かれ、家も没落しているのだぞ」

厳しい声が投げかけられる。

けれど、殿下は一切揺るがなかった。

「承知しております」

短く、しかしはっきりと。

「それでも、他の女では意味がありません」

その言葉に、空気が張り詰める。

(……殿下……)

私は一歩後ろで、そのやり取りを見ていた。

胸が、強く締めつけられる。

(どうして……ここまで……)

こんなにも、私を選んでくれるの。

やがて、長い沈黙の後。
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