Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-


蒼は相変わらず不機嫌そうな顔をしていたけれど、その瞳の奥には、私を放っておけないという、不器用な優しさが滲んでいる。


「……腹、減ってるんだろ。さっきから、うるさい」


「……っ、聞こえてたの……?」


「筒抜けだ」


私は顔を真っ赤にしながら、躊躇いながらも、その手に自分の手を重ねた。


触れた瞬間、ギュッと力強く握り返される。


「離すなよ。……次は、拾ってやれるか分からないからな」


ふわりと、蒼の髪が空気を含んで揺れる。
絹糸のように、一本一本が艶々としていて見惚れてしまう。


手をギュッと握ったまま、蒼は瞳を光らせる。


放射熱が全身を覆って、眩しい光が視界に広がっていく。



「……っ」


咄嗟に強く目を瞑り、耐える。



さっきと同じ……瞬間移動、てやつなのかな────


蒼の手を更に強く、握りしめる。
彼の手の温もりに、安心している自分がいた。



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