Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-
二人の唇が重なるたび、甘い音が静寂の部屋に響く。
彼は私の唇を吸い上げながら、時折、堪えきれないような溜息を漏らした。
その溜息が私の口の中に流れ込み、彼の一部を飲み込んでいるような錯覚に陥る。
「……どうしようもないな。こんなに、お前を壊したくなるなんて」
蒼はそう言いながら、私の唇に、もう一度、今度は優しく、慈しむような長いキスをした。
先ほどまでの独占欲の嵐が嘘のように、そのキスは温かく、私の心を静かに満たしていく。
私の頬を伝う汗を、彼が親指でそっと拭う。
その指先さえもが、私を愛していると伝えてくるようで、私は彼の背中に手を回し、彼を自分の中に閉じ込めるように強く抱きしめ返した。
「蒼……私を、もっと深く染めて」
私の言葉に、蒼は楽しそうに、けれど愛おしそうに目を細めて笑った。
「……俺の事だけを見てろ」
彼は私の唇に、何度も、何度も、追いかけるようにキスを繰り返す。
二人の鼓動は、もうどちらのものか分からないほど速く、重なり合って刻まれていた。
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