Incomplete -この世界にいない君に、恋をした-
Despair
「……紬。少しだけ、立ち止まってくれないか」
彼の声は、これまでにないほど穏やかで、掠れていた。
私は彼の異変を察して、胸を締め付けられる思いで立ち止まる。
蒼は私の両手をとり、真っ直ぐ私を見つめた。
「……俺たちのこの関係を維持できるだけの“対価”を探すと言ったが、あれは嘘だ」
「……え……?」
彼の告白に、私は心臓が止まるかと思った。
「……この世界のどこを探しても、俺とお前が共に生き延びるための“対価”なんて存在しない。
この歪みはあまりに深く、俺たちが愛し合えば愛し合うほど、世界は俺たちを排除し、崩壊しようとする」
彼は私の髪をゆっくりとすくい上げ、耳にかける。
その指先が、わずかに震えているのが分かった。
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