恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
私服姿は、見慣れているはずなのに、なぜか少し違って見える。
ほんのわずかな変化なのに、それだけで意識してしまう。

「遅くなった」

「お……お疲れさまです」

本当は、『おかえりなさい』と言ってみたい。けれど、それは、まだ、早すぎると思った。

たった一言のやり取りなのに、胸の奥が妙に騒がしかった。
言葉を探そうとして、うまく見つからない。
けれど、その沈黙を埋めたいとも思わなかった。
無理に何かを言わなくても、ここにいる意味はもう十分に伝わっている気がしたからだ。

ふと、松澤の手元に視線がいく。
小さな紙袋が差し出された。

「これ」

「……え?」

「猫に」

それだけの説明だった。
受け取ると、中には小さなおもちゃと、やわらかそうな布が入っている。
子猫用の、あたたかそうな敷物。

「……ありがとうございます」

思わず、笑みがこぼれる。
その瞬間、部屋の奥から小さな鳴き声が聞こえた。




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