恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
鍋の火を止め、皿に料理を盛りつける。
いつもと同じ動作のはずなのに、どこか落ち着かないのは、背後にいる気配を、はっきりと感じてしまうからだ。

同じ空間にいるだけで、空気の密度が変わる。
距離は変わっていないはずなのに、ほんの少し近づいただけで、意識してしまう。

テーブルに料理を並べ、向かい合って座る。
筑前煮に揚げ出し豆腐、それとお新香にごはんと味噌汁。
なんてことない、普通の食事。
けれど、湯気の向こうに、松澤の視線がある。
なんだか、心が温かい。

「……いただきます」

「いただきます」

一口、料理を口に運び、松澤が言う。

「……うまい。倉田の料理はあったかいな」

「ありがとうございます」

胸の奥が、じんわりと満たされていく。

二人の間に沈黙が落ちても、それは気まずさではなかった。
何を話せばいいのかわからないわけでもない。
ただ、どんな言葉を選んでも、意味を持ってしまいそうで。
それが少しだけ、くすぐったかった。
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