恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
さっきまでの甘い時間とは違う現実に、足元が揺らぐ。

彼の隣に立つ。

そう決めたはずなのに……。
自分が、本当にふさわしいのかという不安が胸に広がる。


そのときだった。

「おや、お待たせしてしまったかな?」

横から、明るい声が割って入った。
振り返ると、壮年の男性が柔らかな笑みを浮かべていた。
そして、その男性へ智代は、明るい笑顔を見せる。

「真田先生、私たちも今来たところです。ちょうど、息子の克樹に偶然会って……」

真田と呼ばれた男性は、嬉しそうに目を細め松澤へ向き直る。

「やあ、克樹君、久しぶりだね。こんなところで会うとは思わなかったよ」

「真田先生、アメリカではお世話になりました。日本に帰っていらしたんですね」

親し気に、松澤は真田と握手を交わす。
そのやり取りには、自然な敬意と、どこか懐かしさが混じっていた。

「克樹君の活躍も聞いてるよ。君の指導医をしていた私としては誇らしいよ」

「いえ、まだまだです。真田先生の足元にも及びません」

「ところで……こちらは?」

真田の視線が自然と幸子へと向けられる。

「今、お付き合いをしている人です」

松澤がそう言うと、幸子はペコリと頭を下げた。

「倉田幸子と申します」

そう名乗った瞬間だった。
真田の表情が、わずかに変わる。
ほんの一瞬。
けれど、見過ごせない変化だった。

驚きだけではない。
何かを思い出したような、確かめるような、そんな色が混じる。

「……倉田?」


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