恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
声が震えていたかもしれない。ただ、頭を下げる動作だけは、しっかりとできていたと思う。

昌弘は、ゆっくりと頷く。

「初めまして。克樹がこんなに可愛らしいお嬢さんとお付き合いしているとは、なあ、智代」

すると、智代はわずかに目を細めた。

「倉田さん……」

名前をなぞるように口にしてから、静かに視線を戻す。

「どちらにお勤めなの?」

穏やかな口調だった。
けれど、彼女から向けられる視線は自分を測っているのだと、感じていた。

「克樹さんと同じ病院で、受付をしております」

「そう……医療の現場にいらっしゃるのね」

ほんのわずかに間が空く。
その沈黙が、言葉以上の意味を持っていた。
手のひらに、しっとりと汗が滲む。

「ご両親は?」

胸の奥が、強く波打つ。
逃げ場のない質問だった。

「……両親は、いません。今は、祖母と暮らしています」

言い終えたあと、わずかに息が浅くなる。
智代は、小さく頷いた。

「そう……」

それ以上は追及しない。
けれど、重い沈黙が、そこに残っていた。
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