恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
祖母は、しばらく何も言わなかった。
ゆっくりと、目を閉じる。
そして、小さく、息を吐いた。

「……そう」

「……おばあちゃん?」

祖母は、ゆっくりと目を開いた。
その目には、遠い記憶を見ているような色があった。

「前にも話したと思うけど……千賀子は、昔から、自分のことより人のことばかり考える子だったのよ」

やわらかく、けれど確信のある声。

「あの子は、お腹が大きくなっても父親のことは決して語ろうとしなかった。でもね、お腹を撫でながら、とても幸せそうにしていたわ」

その言葉に、幸子の胸が強く締めつけられる。

「……じゃあ」

声が、震える。
祖母は、静かに頷いた。

「その人の話が本当なら……そういうことも、あるかもしれないわね」

否定しない。
けれど、押しつけもしない。
ただ、事実として受け止める言い方だった。

幸子の手が、膝の上でぎゅっと握られる。

「……どうしたらいいのか、わからない」

こぼれた本音は、小さかった。
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