恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
忙しくても、ちゃんと息子を見てきた人の声。
幸子は、その響きに胸の奥がじんわり温かくなるのを感じていた。


ラウンジの窓越しに、午後の柔らかな陽射しが差し込んでいた。
最初に感じていた緊張は、いつの間にか少しずつほどけている。

話しているうちにわかってきた。

厳しくても、ちゃんと向き合う人なのだと。
曖昧に濁したり、適当に合わせたりしない。
だからこそ、言葉に重みがある。

「克樹、小さい頃から妙に頑固だったのよ」

紅茶を口にしながら、智代が小さく息をつく。

「一度決めたら、本当に人の話を聞かないの」

幸子は思わず笑った。

「……今も、そんな感じです」

「でしょう?」

智代も珍しくくすっと笑う。

「でも、あなたの前だと少し違うわね」

その言葉に、幸子は目を瞬かせた。

「え……?」

「昔はね、誰も寄せ付けないって顔をしてたのよ、あの子」

智代は、どこか懐かしそうに目を細める。

「人に頼るのも下手だったし、弱いところなんて絶対に見せなかった」

その言葉を聞きながら、幸子は静かに視線を落とした。

確かに、松澤は今でもそういうところがある。
平気な顔をして、無理をする。
何でも一人で抱え込もうとする。

けれど、ごはんを食べて美味しいと言ってくれる。
子猫を抱いて優しい目をする。

そう思えた瞬間、胸の奥が少しだけ温かくなった。
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