恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
新居は、松澤と何度か相談を重ねた末に決まった。
今の家から歩いて5分ほど。
大通りから一本入った静かな場所に建つ、高層マンションだった。
「いいんですか?」
そこに決まったとき、幸子は思わずそう聞いた。
松澤は、平然とした顔で答えた。
「何かあったとき、すぐ来られる距離の方がいい」
ぶっきらぼうに見えて、思いやりのあるの言葉に、幸子はそれ以上何も言えなくなった。
正式に契約が決まり、少しずつ引っ越しの準備が始めた。
ひとり分の荷物を運び出すだけ、そう思っていても簡単には片付かない。
休日の午後。
幸子は自分の部屋で、押し入れの整理をしていた。
「……懐かしい」
奥から出てきたダンボール箱を開くと、中には子どもの頃の写真や、古い手紙が入っている。
浴衣姿の自分。
運動会の日。
母と祖母に挟まれて笑っている写真。
そのどれもが、少し色褪せていた。
自然と、口元がやわらぐ。
けれど、その箱のさらに奥に、見覚えのない大学ノートが数冊重ねられているのを見つけ、幸子の手が止まった。
「……これは?」
表紙には何も書かれていない。
少しだけ迷ってから、そっと一冊を開く。
その瞬間、ぱらり、と何かが膝の上へ滑り落ちた。
「……え?」
拾い上げた幸子は、息を呑む。
それは、古い写真だった。
今の家から歩いて5分ほど。
大通りから一本入った静かな場所に建つ、高層マンションだった。
「いいんですか?」
そこに決まったとき、幸子は思わずそう聞いた。
松澤は、平然とした顔で答えた。
「何かあったとき、すぐ来られる距離の方がいい」
ぶっきらぼうに見えて、思いやりのあるの言葉に、幸子はそれ以上何も言えなくなった。
正式に契約が決まり、少しずつ引っ越しの準備が始めた。
ひとり分の荷物を運び出すだけ、そう思っていても簡単には片付かない。
休日の午後。
幸子は自分の部屋で、押し入れの整理をしていた。
「……懐かしい」
奥から出てきたダンボール箱を開くと、中には子どもの頃の写真や、古い手紙が入っている。
浴衣姿の自分。
運動会の日。
母と祖母に挟まれて笑っている写真。
そのどれもが、少し色褪せていた。
自然と、口元がやわらぐ。
けれど、その箱のさらに奥に、見覚えのない大学ノートが数冊重ねられているのを見つけ、幸子の手が止まった。
「……これは?」
表紙には何も書かれていない。
少しだけ迷ってから、そっと一冊を開く。
その瞬間、ぱらり、と何かが膝の上へ滑り落ちた。
「……え?」
拾い上げた幸子は、息を呑む。
それは、古い写真だった。