恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
チャペルの扉の向こうから、静かな音楽が聞こえてくる。
スタッフが、ゆっくりと扉へ手をかけた。
開かれた瞬間、光が差し込む。
そこには、たくさんの人たちがいた。

祖母。
智代と昌弘。
病院の同僚たち。

そして――
祭壇の前で待つ、松澤。

その姿を見た瞬間、不思議なくらい胸の奥が静かになった。

松澤は、まっすぐ幸子だけを見ている。
逃げ場なんてないくらい、真っ直ぐに。
でも、その視線が今は嬉しかった。

ゆっくりと、歩き出す。

真田と並んで歩くバージンロード。

一歩進むたび、色んな記憶が胸をよぎる。
母のこと。
祖母のこと。
一人で抱え込んでいた頃の自分。
そして、隣で支えてくれた松澤。

全部が、今ここへ繋がっている。
柔らかな光が、長いベールの上へ静かに落ちていた。

真田の小さな声が聞こえる。

「……ありがとう」

幸子は、少しだけ目を見開く。

「え?」

「君が、生まれてきてくれて」

その声は震えていた。
幸子の目にも、じわりと涙が滲む。
けれど、不思議と悲しくはない。
真田はゆっくりと歩みを止める。

そして、松澤の前で足を止める。
ほんの一瞬だけ、真田と松澤の視線が重なる。
その間には確かな信頼があった。

真田は静かに、幸子の手を松澤へ託す。

「……娘を頼む」

「はい」

その瞬間だった。
松澤の大きな手が、しっかりと幸子を包み込む。

「幸子」

低い声で名前を呼ばれる。
幸子は涙をこらえながら、小さく笑った。

「……はい」

その返事に、松澤がほんの少しだけ表情をやわらげる。

チャペルの光が、二人を静かに包み込んでいた。
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