恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
長いベールが、静かに揺れる。
廊下へ出ると、少し離れた場所に黒の礼服姿の真田が立っていた。
いつもの余裕ある表情とは違って、どこか落ち着かない。

幸子へ気づいた瞬間、真田の呼吸が止まる。
視線が、ゆっくりと幸子を見つめる。

何か言おうとして、でも言葉にならない。

その沈黙が、かえって胸を熱くした。
やがて真田は、小さく笑う。

「……綺麗だ」

掠れた声だった。
幸子は、少し照れたように笑った。

「ありがとうございます」

真田はゆっくり近づいてくる。
その歩幅が、どこか慎重で。
大事なものへ触れるみたいだった。

「本当に……千賀子によく似ている」

ぽつり、と落ちた声。

その響きに、幸子の胸がぎゅっと締めつけられる。
一緒に過ごした時間なんて、ほとんどない。
けれど今、その言葉には確かな想いがあった。
幸子は、そっと腕を差し出す。

「……お願いします」

真田の目が、わずかに揺れる。
そして静かに、その腕へ自分の手を重ねた。

温かかった。
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