恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
お昼休みが終わり、職場に戻っても、幸子はメッセージが気になって、集中できずにいた。
そのとき、向かいの席の女子が声をかけて来る。

「ねえ、倉田さん」

幸子は顔を上げる。

「松澤先生、朝、受付に来てたよね」

「……はい⁉」

声が裏返った。
彼の名前を聞いただけで、過剰なほど反応してしまった。
向かいの席の女子は、冷たい視線を向ける。

「何の用だったの?」

「カルテを預かっただけです」

思わず、言い訳をしてしまう。

「そっか」

「先生は業務でしか、受付に立ち寄りません」

「そうだよね。先生って、カッコイイのに冷たいのよね」

そんなことを言われても……。
幸子は返事に困り、曖昧に笑ってごまかした。

でも、ポケットのスマートフォンが、少しだけ温かい。
画面には、さっきのメッセージ。

『帰りに寄る』

その言葉を見つめながら、幸子は胸の奥で、小さく思った。

(先生は、本当に冷たい人なんだろうか)

昨夜、雨の中で子猫を抱き上げたときの表情を、幸子はまだ覚えていた。
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