恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
数分後。
インターホンが鳴る。
扉を開けると、そこに立っていたのはやはり松澤だった。
「こんばんは」
「……こんばんは」
「ミルクは、元気か?」
「はい、ごはんを食べて、よく眠っています」
他愛もないやり取り。
けれど、そのあとに続いた言葉に、幸子は目を瞬かせた。
「これから猫の物を買いに行こう」
「え……?」
「足りてないだろ」
当然のように言われて、言葉に詰まる。
確かに、まだ揃っていないものは多い。
けれど、忙しい松澤の手を煩わせるなんて、と気が引ける。
「あの、休みの日に、私一人で……」
そのとき、かぶせ気味で松澤の声が聞こえた。
「俺の楽しみを奪うのか?」
(えっ……松澤先生、猫の物そんなに買いたいの?)
意外なセリフに、幸子は目を丸くした。
冗談なのか、本心なのか……。
なんだか、冷たいと言われている松澤の事が、可愛く感じて、幸子はふふっと笑みがこぼれた。
「……いえ」
「じゃあ決まりだ」
幸子の笑顔にホッとしたように松澤は目を細め、踵を返した。
その背中を見ながら、幸子は小さく息を吐く。
――どうして、この人は。
こんなふうに、当たり前みたいに来てくれるのだろう。
戸惑いと一緒に、ほんのわずかな期待が胸の奥に灯る。