恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
タクシーに乗ってたどり着いたペットショップ。
その店内に入った瞬間、幸子は思わず足を止めた。

柔らかな照明に照らされた空間は、どこか落ち着いていて、いわゆるペットショップの賑やかな印象とは違って見える。

並べられた商品も、どれも整然としていて、見慣れないものばかりだった。

「……綺麗なお店ですね」

思わず漏れた言葉に、松澤は軽く頷くだけで、すでに棚の方へと歩き出している。

まるで必要なものが最初から頭に入っているかのように、次々と商品を手に取っていく。
棚の前で足を止めることもほとんどなく、手際よくカゴの中へ入れていく様子に、幸子は思わず目を瞬かせた。

「これと、これ。あと、この猫の砂がおからで出来てて、粉立ちしにくいらしい。ネットで評判が良かった」

「……え」

思わず、声が漏れる。

さらに別の棚へ移動しながら、松澤は続ける。

「子猫用のフードは消化に負担が少ないものを選んだ方がいい。あと、ウェットとドライは併用した方が食いつきが……」

「先生。……猫、好きなんですね」

幸子の指摘に、松澤は一瞬だけ言葉を止める。

「……必要なことは調べる」

そう言って、また迷いなく別の商品を手に取る。
しかも、ラベルを一度も確認せずに。

幸子は思わず、小さく笑ってしまう。

「……すごく詳しいです」

そう言うと、松澤は照れくさいのか視線を逸らした。

「……念のためだ」

それだけ言って、また棚に向き直る。
けれど、その背中は少しだけ気まずそうで。

(かわいい……)

思ってしまった瞬間、慌ててその感情を押し込む。

気づけばカゴの中には、猫の砂だけでなく、無添加の子猫用のおやつや、ウエットフードにドライフード、小さなベッドにおもちゃまで入っている。

どれも質の良さそうなものばかりで、値段を想像するだけで落ち着かなくなる。

「先生、こんなに……」

「必要なものだ」

あっさりとした返答。

それ以上、説明する気もなさそうだった。

「でも、私……」

「使うのはあの猫だろ」

言葉を重ねる前に、静かに遮られる。

やがて会計へ向かうと、松澤は迷うことなくカードを差し出した。
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