恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
「……違うんですか」

かすれるように、問い返す。
その声に、松澤は小さく息を吐いた。

「違う」

即答だった。
迷いも、含みもない。
その一言だけで、空気が大きく揺れる。

幸子は思考が、追いつかず、大きく目を見開いた。

「じゃあ……デートしてたって……」

「してたな」

あっさりと認める松澤だった。
けれど、その続きが、幸子の予想とはまったく違った。

「昨日の夜、俺と一緒にいたのは、誰だ」

答えは、わかっている。
わかっているのに、口にできない。

松澤が、一歩踏み出した。

「……倉田、お前だろ」

逃げ場は、もうなかった。
胸の奥が、大きく揺れる。
昨夜の時間が、一気に意味を持ち始める。

「俺のデート現場を見られてたなら、その“デートしてた相手”はお前だ」

否定の余地がない。
幸子は息を呑み込んだ。
心臓が、ひどく速く打っている。
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