恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
震える声で、問い返す。

「……じゃあ、先生は……どういうつもりで」

最後まで言えなかった。
聞いてしまえば、戻れなくなる気がして。
だが松澤は、迷わなかった。

「そのままの意味だ。昨日、一緒にいたのも」

松澤の真剣な瞳から、目を逸らせない。

「今日、呼び出したのも、全部、理由がある」

街灯の下、影だけがゆっくりと揺れていた。

二人の距離は、もうほとんど残っていなかった。
あと一歩踏み出せば、触れてしまう。

幸子は、息をするのも忘れたように、ただ目の前の松澤を見つめていた。

逃げたいと思う気持ちは、確かにある。
けれど、それ以上に離れたくないと思っている自分がいた。

でも――
踏み込むのが、怖い。

胸の奥が、ひどく熱い。
言葉では整理できない感情が、溢れそうになっている。
松澤は、何も急がない。だが、引くこともない。
その在り方が、余計に心を揺らす。

「……まだ、理由が必要か?」

低い声が、すぐ近くで落ちる。

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