恋の雨が降るとき 〜クールな外科医は甘く囁く~
気づけば、指が動いていた。

『……怖いです』

送信したあと、胸が強く締めつけられる。
けれど、今はもう、隠そうとは思わなかった。

少しの間。
静かな時間が流れる。
そして、届いた返事は。

『そうだよな』

それだけだった。
それなのに、胸の奥の張りつめていたものが、すっとほどけていく。

さらに、続けてもう一通。

『明日、終わったら顔出す』

その言葉に、息を呑む。

手術のあと、一番忙しいはずなのに、それでも来ると言ってくれる。
その事実が、胸の奥をあたたかく満たしていく。

『待ってます』

自然と、そう打っていた。
もう迷いはなかった。
スマートフォンをそっと置く。

子猫が腕の中で、小さく鳴いた。
幸子はその背中を撫でながら、ゆっくりと息を吐く。

怖さは、消えていない。

それでも、一人ではないと、はっきりと感じられた。

その夜、幸子はようやく、静かに目を閉じることができた。
< 96 / 223 >

この作品をシェア

pagetop