思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
「ああ。本当だよ」

迷いのない答え。それなのにどうしてだろう。

胸の奥が――静かなままだった。

カフェを出た後、私たちは並んで歩いた。

夜の街は、少しだけ冷たい空気に包まれている。

「送るよ」

そう言ってくれる声は、どこか自然だった。

断る理由もなく、私はそのまま隣を歩く。

しばらく無言が続いたあとふいに、手を取られた。

「……っ」

驚いて視線を落とす。指と指が絡む。

恋人同士の、当たり前の繋ぎ方。

そのはずなのに――

「……大丈夫?」

祐樹が覗き込むように聞いてくる。

「え?あ、はい……」

慌てて頷く。触れられて嫌なわけじゃない。

むしろどこか、ほっとする。

温もりが、安心感を連れてくる。

――この人が、私の彼氏。
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