思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
恋人だと、そう言っていた。

三年付き合っていたと。

結婚の話までしていたと。それなのに。

「……ふっ」

突然、祐樹が笑い出した。

肩を揺らして、可笑しそうに。

「あーあ」

力の抜けた声。

「最後まで騙せると思ったんだけどな」

「……え?」

言葉の意味が、すぐには理解できない。

「何を……」

祐樹は、ゆっくりと指輪の箱を手に取った。

そして、そのままポケットへと仕舞い込む。

「こんなものまで用意したのに」

「……偽物の指輪?」

かすれた声で聞く。

すると祐樹は、少しだけ笑った。

「本物だけどね」

軽く肩をすくめる。

その態度が、ひどく現実味を帯びていた。

「俺さ」

ゆっくりと、言葉を選ぶように話し出す。

「千紗のこと、ずっと好きだったんだよ」
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