思い出せない恋人より、忘れられない人がいる ――記憶喪失の秘書は冷徹社長に溺愛される
視線が、真っ直ぐに私に向けられる。

その目は、今まで見せていたものと違っていた。

取り繕っていない、本当の感情。

「でも、この人がいたから」

ちらりと、社長を見る。

「ずっと手出しできなかった」

淡々とした声。

けれど、その奥にある想いは重い。

「記憶喪失だって聞いてさ」

少しだけ、口元が歪む。

「今がチャンスだって、思ったんだ」

何も言えなかった。

言葉が、出てこない。

「恋人だって言えば、信じるだろうって」

その言葉が、胸に突き刺さる。

やっぱり、そうだった。

どこかで感じていた違和感は、間違っていなかった。

「でも」

祐樹は、ゆっくりと息を吐いた。

「やっぱり、本物には敵わなかったな」

その一言に、静かな敗北が滲む。

新太へと向ける視線に、悔しさと諦めが混ざっていた。

「……祐樹」
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