大好きな幼馴染は既婚者子持ち

第4話 ジェットコースター

「これ、怖いんかな?」
「どうやろ、わからへん。類斗怖いの無理?」
「まあ、普通」
「そうなん、わたしも。やめる?」
「やめへん。そんなんしたらあいつらに笑われるやろ?」
「確かに」

 わたしたちは前に従って動く。待ち時間は1時間と入り口で書かれていたけれど、わたしはもっと長かったらいいのにな、と思っていた。何気ない会話なのに、2人きりだと内臓まで響くような気がした。

 類斗の身長はわたしとあまり変わらなかった。早生まれの類斗はわたしよりも若い。

「これ乗りながらさ、好きなやつの名前叫ばん?」
「え? なにそれ」

 次がわたしたちの番って時にされた類斗の提案にテンパる。手がびくんとなる。聞きたいような聞きたくないような。そんなんいいんか?

「おらんの? 好きなやつ」
「え、どうしたん急に」
「普通に乗るんもおもろないなーって思っただけやけど」
「なるほどやけど」

 類斗の好きなひとを聞いてわたしはどう反応すればいいんだろうか。そして、類斗はわたしの好きなひとを聞いてどうするつもりなんだろうか。

「ていうかさ、俺、受験する高校やっと決まってん」
「そうなん?」
「ああ。ゆりちゃんは?」
「わたしはこの間の三者面談で決まったよ」
「そうなん、どこ行くん?」

 わたしと類斗の受験する高校は全く別の場所だった。

「そうなんや」

 なんとなく、進路についての話をわたしたちはしなかった。したところでバラバラになるのはわかっているからだ。

 じゃあさ、あと数ヶ月で引越ししちゃうこともこの時に教えておいてよ。わたしは思う、過去を振り返って。じゃあさ、もっと違う過ごし方をしたのに。

 ジェットコースターの真ん中辺りに乗り込む。ベルトをつけたときだけ手を離したけど、また繋いだ。はぐれないのに不思議だった。

「うおードキドキするなあ」

 類斗の緊張が手からも伝わる。わたしはぎゅっと握り返す。

「最後、ここに戻るところのくだりのところで叫ぶで、約束な」

 だけど、わたしは怖過ぎて、下を向いていて最後のくだりなんてわからなくて「ぎゃーーーーー」という声しか出なかった。

 ジェットコースターが止まると、手が離れた。

「うわー怖かったなあ!」

 類斗がわたしのリュックを手渡してくれる。

 聞きそびれた……。そして何も言わず叫び声をあげていたわたしに類斗は怒っている気がして顔が見れない。

「やば、時間ないわ。走るぞ」

 わたしたちはみんなが待つ集合場所にとにかく走って行った。類斗はわたしのリュックを途中から胸の前にかけ持ってくれた。そしてみんなから見えない辺りまで再び手を握ってくれていた。

 わたしと身長変わらないのに、類斗が走る力は強く、手だけがたまに離れそうになった。わたしたちはおかしくてケラケラ笑った。
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