悪辣魔王の腕のなか
 一方……操と衣都の視線が同時に響司へと向けられる。

「同じ環境で育った双子の兄弟が、どうしてこんなにも違うわけ? DNAの奥深さを実感するわよね」

 操がヒソヒソ声でささやいた。

「うちの響司先生のあだ名はね、【絶対零度の魔王】よ。ぴったりだと思わない? ま、名づけたのは私だけど」
「――絶対零度の魔王」

 オウム返しにつぶやいた衣都の視線の先には、難しい表情でPCのキーボードを叩く彼がいる。怖いほど完璧に整った面差し、他人を寄せつけないピリリと張りつめたオーラ。
 たしかに、背中にコウモリみたいな魔王の羽が生えていても違和感はなさそうだ。

(うん、ぴったりすぎるあだ名ね)

 その失礼すぎる感想はさすがに口には出さなかったけれど、魔王には超能力でも備わっているのだろうか。響司の鋭い瞳がジロリとこちらに向き、衣都はヒッと息をのんだ。

「と、ところで操さん。うちの新製品の使用状況についてなんですが」

 慌てて視線をそらし、仕事モードの表情を取り繕った。
 
 操には十五分ほど時間をもらって、導入した機器のよかった点、逆に困っている点などをヒアリングした。そのあとは法医学センターを出て、次は外科へと足を向ける。
 医療関係者は多忙なので、まとまった打ち合わせ時間を確保してもらうのは難しい。頻繁に顔を出して、雑然程度でもいいから意見をもらうのが自分の仕事だ。
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