総長は、私にだけ甘すぎる。
「……理由があったら、もっと厄介だ」

そう言った声は、少しだけ低かった。

その意味が分からないまま。

でもなぜか、それ以上聞けなかった。

家の前に着く。

「ここまででいい」

そう言った彼は、振り返らない。

でも私は気づいてしまった。

彼が少しだけ――立ち去るのを遅らせたことに。
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