推しの妻になりました〜アイドルと契約結婚〜
第20話 対面のとき②

「如月の名前があろうとなかろうと、征志郎さんを幸せにするのは私です。お父様が認めなくても、私が、征志郎さんの味方であり続けます!」
言い切った。
苺依の肩はまだ震えていたけれど、その瞳だけは征十郎を真っ向から見据えて、一歩も引かなかった。
征十郎は、呆気に取られたように目を見開く。
これまで金や名声に群がってきた者たちとは明らかに違う、青臭いほど純粋な「意志」に気圧されたかのように、彼はふいと視線を逸らした。
「……フン、勝手にするがいい。征志郎、せいぜいその威勢のいい小娘に、愛想を尽かされないようにするんだな」
征十郎はそれだけ言い残すと、背を向けて去っていった。
パタン、と重厚なドアが閉まる。
崩れ落ちそうになる膝を必死で支えて立っていると、背後からTOMAの低い声が降ってきた。
「……おい」
「す、すみませんでした!」
天下の如月征十郎に向かって大層な口をきいてしまった。
計画にはない展開で苺依は焦った。
(……私ってば、なんてこと言っちゃったの!? これじゃあ計画が台無し……)
「……すみません! 私、つい……その、言い過ぎました! あんな生意気なこと、契約外ですよね、本当にごめんなさい……!」
苺依が勢いよく頭を下げると、頭上でふっと短い溜息が聞こえた。
「……謝んな。あれでいい」
「え、でも……」
不意に、大きな手が苺依の頭にポンと置かれた。
いつもみたいに乱暴に掻き回すんじゃなくて、優しく、慈しむような手つきで。
「よくやった……サンキュ、いちご」
その言葉は、どんなステージでのMCよりも、苺依の胸に深く刺さった。
TOMAはそのまま、苺依の肩をぐいっと引き寄せ、自分の腕の中に閉じ込めた。
「……しばらく、このままでいろ」
「え……?」
(えええええええっ!?)
TOMAの胸の鼓動が、苺依の耳にダイレクトに伝わってくる。
苺依は真っ赤になりながらも、少しだけ、TOMAの背中に手を添えた。
――To be continued