推しの妻になりました〜アイドルと契約結婚〜

第3話 スイートルームの罠②



 悪魔のような笑みを浮かべたTOMAは苺依にさっきの婚約者の振りをしろと言ってきた。

「いやいやいや! 何言ってるんですか。っていうか嘘だったんですね」
「当たり前だろ。縁談なんてクソだりぃ」
「………」

 テレビとの温度差に、今目の前にいるのが本物のTOMAか疑いたくなる。

「なら他の人とかに頼んでください。私はここのコンシェルジュ見習いですよ?」
「だからいいんだよ。芸能界の女も面倒くさいのが多いし。あんたみたいな一般人の方が好都合」
「好都合……」

 言葉のチョイスにちょこちょこ腹が立つ苺依。

「もちろん、タダとは言わねぇ」
「え……」
「毎月100万」
「え!?」
「今の給料にプラス100万だ。なら文句ないだろ」
「100……」

 言葉に詰まる。
 100万円の魅力に負けて「やります」って言ってしまいそうだった。

「いや、いやいやいや! 無理です。絶対無理です!」
「は? 無理? この俺が言ってんのに?」
「無理です! 私の推しがこんな悪魔だったなんて……」
「そりゃあ悪かったな」
「思ってないでしょ」
「まーな」

 この、野郎……!
 悪魔か!
 
 って心の中で罵倒したのに。

「悪魔じゃねぇ」
「なんでっ……はぁ…」

 何を言っても無駄な気がして返す気力を失った。

「で、やるだろ?」
「やりませんよ」
「なにが気に入らないんだ?」
「それは……」

 はっきりとは言えない。
 推しと一緒にいれることは単純に嬉しいはずなのに。
 本当の顔を知ってしまった今は、ただの性格の悪い男だ。
 そんな人の婚約者なんて、できっこない。

「安心しろ。あんたには手出さないし、その生活のままでいい」
「ほんとに?」
「ああ。あくまでも契約上の婚約者だ。それとも手出してほしいか?」
「なっ! んなわけないでしょ!」
「冗談だって。俺だって誰でもいいわけじゃねぇんだ」

 急に声のトーンを落としたTOMAの続きの言葉が気になってしまう。

「同業だとどうしてもスキャンダルになっちまうからな」
「それは…そうでしょうね」

 TOMAの熱愛なんて発覚したら大ニュースだ。

「だから、な? ずっとじゃない。親父が諦めるまででいい」
「………」

 ぎゅっと手を握られ、眩いほどの顔でみつめられてノーと言える女はいるんだろうか。
 ………否!!

「頼む……いいだろ?」

 上目遣い―!!!
 断れないーー!!!

「わ…………私でよければ」
「まじ? サンキュ。明日、もっかい部屋にこい。契約書にサインしろ」
「契約書!?」
  
 あぁ、やっぱり早まったかもしれない。
 高階苺依、23歳。
 人生最大の、そして最悪の「推し活」が始まろうとしていた。

――To be continued
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