推しの妻になりました〜アイドルと契約結婚〜
第41話 ファム・ファタール

三十分後、苺依はメイクを終えてスタジオに戻った。
その瞬間、現場の空気が変わった。
深いネイビーの、シルクのキャミソールドレス。
華奢な肩のラインと、透き通るような背中が大胆に露出している。
「……っ」
その変わりように誰もが思わず息を呑む。
もちろんTOMAも……。
「あ、あの……」
「わぁぁぁ! すっごくいいわ! 理想通りよ!」
麻生さんが歓喜の声を上げて近づいてきた。
監督も顎に手をかけて満足そうに微笑んでいる。
「よし、撮影再開するぞ」
その一言で、現場が再び慌ただしく動き始める。
今回のテーマは「ファム・ファタール~運命の女~」だ。
撮影はRYU、KAI、SHO、TOMAとのペア写真と全員との集合写真。
「よし、KAI! 入ってくれ」
「はい。じゃ苺依ちゃん、行こうか」
お姫様のようにエスコートされ、苺依はカメラの前に立った。
ペア写真にはコンセプトがあった。
KAI、RYUとの撮影を順調に終え、SHOの番になった。
「よろしくお願いします、SHOさん」
「足手まといにならないでよね、大福」
「うっ……頑張ります……」
圧を感じる言い方もSHOなりの激励なのだと苺依は知っている。
滞りなく進む撮影も残すところTOMAのみとなった。
「じゃ、TOMA! 入ってくれ」
「はい」
コツコツと靴音を鳴らしながら、TOMAが近づいてくる。
その表情はなんだか険しく見える。
「TOMAさん……よろしくお願いします」
「………」
黙ったままのTOMAは苺依の腰を抱き寄せる。
「……あんた……何で断らなかった」
低く唸るような声色。
「断るつもり、でしたよ……」
「なら断れよ」
「それは……そうですが……」
ここまで順調に進んできたのに、TOMAの怒りに触れて苺依の表情が暗くなる。
顔が映っていないのがせめてもの救いだ。
「いいよ! TOMA、彼女の髪を掻き上げて!」
撮影の合間にカメラマンの声が響く。
TOMAはその言葉のままに従う。
熱い手のひらで苺依の髪をまとめ上げられる。
「っ………」
「そうそう! そのまま首筋に近寄って!」
剥き出しのうなじと首筋にTOMAの息がかかる。
「……っ」
シャッター音が鳴り続ける中、TOMAは震える苺依の耳朶に唇を寄せた。
「ん………ちょっと、TOMAさん?」
小声でTOMAを制止しようにも、身動きがとれない。
それをいいことに、TOMAはさらに大胆になっていく。
――To be continued
